(294)チームメイトを軽蔑したくないし、裏切られたくないし…。

「チームジャージの代金をお支払いしたいのですが、いつまでですか?」。
平日の16時頃、仕事中にチームメイトのBさんから電話がかかってきた。
先日の伊勢志摩サイクリングフェスティバルで、遅刻、準備不足で人様に迷惑を掛け、酔っ払ってジェットコースターに乗った、あのBさんだ。

質問に対する回答は、メールで1回、口頭でも1回伝えたが、電話でも確認を取らないと気がすまないらしい。
「Bさんの都合がいい時でいいですよ。俺の方で立て替えたので、メーカーさんには迷惑を掛けません」。
「あ、そうなんですか」と、まるで初めて聞いたかのような反応。
そして、「それでね、もし今日時間あったら、飲みに行きませんか?」と。
「それが言いたいんやったら、最初からさっと言えや!」と思いながらも、「夜は何も予定無いですが、会社を出る時間といつもの飲み屋に着く予定の時間を、今のところはっきりわからないので、また後で連絡します」。

スケジュールを確認したところ、とりあえず18時までは会社にいなくてはならないので、「バスに乗るか歩いて行くかはわかりませんが、飲み屋に着くのは19時。いや、それより少し早くなるかも知れません」。
Bさんにメールを送った。
それが17時。

17時過ぎ、Bさんから返事。
「わかりました。僕はあと5分ぐらいで家を出ます」。
Bさんの家から飲み屋まで、徒歩10分もかからない。
「え?何か勘違いしてるんちゃうんか?」。
そう思い、「俺が着くんは、19時前ですよ。Bさん、今から飲み屋に行っても早く着きすぎでしょ?」とメール。

17時半、Bさんから返事。
「今、お店の人と楽しく語っています」。
俺は待ち合わせが19時のつもりなのだが、Bさんは17時半に飲み屋に着いて、既に酒を飲んでいるようだ。
意味がわからない。

18時になり会社を出て、18時23分のバスに乗ろうとしたが、バスが来ない。
何かトラブルでもあったのだろうか。
寒く、そして薄暗い中、ぼんやりバスを待っていると、18時35分。
やっとバスが来た。

飲み屋の最寄りのバス停に着いたのは、18時45分ぐらいだったと思う。
運賃の220円を払って降りる際、胸元に振動を感じる。
胸ポケットからスマートフォンを出すと、Bさんから電話。
「すぐ飲み屋に着いて顔を合わすのに、いちいち取るのも面倒くさいわ」。
そう思い、無視して飲み屋に向かって歩いた。

飲み屋に着いたのは、18時50分。
Bさんは、既に出来上がっていた。
「ほんまに、KRMさん遅いから、僕、もう帰ろうと思いましたよぉ」。
「こいつは頭がおかしいんか?」と素直に思った。
「19時かそれより少し早く着く予定」と、俺は最初から言っているのに。

「いやぁ、来てくれてありがとう。ほんまにありがとう」。
Bさんが、やたらと握手を求めてくる。
「それでねぇ、この前、伊勢志摩走りましたやん」。
いきなり話をふられ、俺は「はいはい」。
「イベントの前の日に、牡蠣を食べた後、ホテルスペイン村の温泉に行ってねぇ」。
「はいはい(俺は温泉に行かんとホテルの部屋に帰ったけど)」。
「その時にAさんにねぇ」。
途中まで聞いて、「それ、この前言うてたやんけ」と思った。
しばらくして、「この前、伊勢志摩行った時、ホテルスペイン村の温泉でねぇ」。
「2~3分前に、そのくだりを聞いたって」と思いながら、俺はすごく気分が悪くなった。

酒癖の悪い人と接していると、時間の無駄としか思えない。
また、酒癖の悪い人を、俺は「人間」ではなく「獣」と感じてしまい、一緒にいるとすごく居心地が悪い。
本音として、「面倒くさいわぁ」。

「KRMさんは、明日仕事でしょ?」。
「はい」。
「僕も仕事なんですよ。いやぁ、今日はよく飲んだ」。
「はぁ」。
「じゃ、そろそろ僕、帰りますわ」とBさん。
スマホで時間を確認すると、19時15分。
「酒癖悪いもんと一緒にいる時間が短いのは助かるけど、この人、たったこれだけの時間のために俺を呼び出したんか?」。
非常識すぎて素直に気持ち悪くなった。
償いの意味なのか、俺の肩を揉んだり握手を求めてくるBさん。
「そんなんいらんねん。気持ち悪い。余計なことせんと早く帰ってくれ」と、俺はイライラした。

Bさんは帰った。
俺はBさんの食べ残した鶏の造りを見て、「俺が食いたくて注文したわけでもないのに、俺が処理せなあかんのか?」。
「甚だ迷惑だ」と感じた。

ひとり、生ビールを飲みながら、「前にもこんなことがあったな」。
思い返すと、今年のオールスターの日だ。
急に「今から飲みましょう」とBさんに誘われ、甲子園からバスに乗ろうとしたが、オールスターの影響で人が多く、すぐに満員。
1本送らせて、ぎゅうぎゅう詰めのバスに乗り、待ち合わせの飲み屋に着き、Bさんと乾杯。
そして、10分ぐらいで「さぁ、帰りましょう」と。
Bさんはたらふく飲んで満たされただろうが、「バスに乗ってまで来て、10分?アホか?」となった。
それから数日後、「失礼しました」と謝られたが、酒を飲んで常識が通じない、まわりが見えない、人の気持ちがわからない、自分の都合しか頭に無い、そんなBさんが怖いと思った。
酒を飲めば理性を失う部分があるのはわかるが、あるラインまでは自分を律しないと軽蔑される。
世の中、酔っ払ったもん勝ちではないのだ。

翌日の朝、Bさんからメールがあった。
「昨夜はすみませんでした。酔ってしまい、記憶が無いのですが、何か粗相は無かったでしょうか?」と。
続けて、「ジャージの代金を支払いたいと思いますので、年内にまた一緒に飲む日を作って頂けませんか?」。
同じ趣味を持ち、これから同じチームで同じジャージを着て走ろうという仲だが、俺は返事を躊躇した。

Bさんは40代後半。
今さらでたらめさ加減が治るとは思えない。
また、酒癖の悪い人の謝罪に意味を感じない。
どうせ同じことを繰り返す。
そう頭ではわかっているが、「どうしょうかなぁ」。
「みんなでチームジャージ買ってもうたからなぁ」。
仕方が無いので「わかりました」と返事した。
また裏切られるかも知れないが、我々は同じチーム(俺を含めて3人)。
チームメイトだ。
付き合わなくてはなぁ。
でも、もう裏切られたくないなぁ。

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