(3)1999年の俺は、デブではなかった。

大学を1年留年した。
さらにもう1年留年という不幸な可能性もあったが、ギリギリの単位でなんとか卒業はできた。
ただ、卒業したものの、就職活動などまともにしておらず、卒業と同時に路頭に迷う羽目になる。

「とりあえず仕事をしなくては」ということで、デューダか何かの転職情報誌を買ってきて、新卒募集している企業をピックアップした。
そして、その中でもソフト開発系の企業に絞って応募する。
元々、ソフト開発という仕事に憧れがあったわけではない。
「座ってする仕事はラクそう」とか「女ウケよさそう」とか、どうしようもなくくだらない動機である。
俺は、後々、痛い目にあう。

大阪のある企業の面接を受けた結果、「現時点では、正社員としての採用できないが、まず、うちの派遣社員として結果を残してから正社員に登用するということでどうか?」と言われた。
「正社員じゃないのなら、コンビニでバイトしてるのと同じじゃないか?」と素直に思ったのは憶えているが、この時、俺はどう返事をしたのかは憶えていない。
すごく複雑な心境だったと思う。

数日たったある日の朝、俺の携帯に電話があった。
昼まで寝ている生活にどっぷりつかっていた俺は、不愉快な気分で電話にでたところ、派遣をすすめてきた企業の営業さんの声だとわかった。
「開発中の携帯電話をテストする仕事なんですが、どうですか?」。
1~2分、「俺にできるんかなぁ?」と悩んでいると、「あなたにしてもらおうと思って仕事をとってきたのですが、煮え切らないのなら結構です。他の人に紹介します」と脅しをかけられた。
「自分がやります!」。
反射的に言ってしまった。
負けた気分である。

ゴールデンウィークが終わり、初出勤の日がきた。
場所は、郊外にある大手家電メーカーの製作所。
そこの最寄り駅で待ち合わせ、これから共に働く15人ほどのメンバーと対面する。
後々考えるとアホらしいが、その時は少し緊張した。

製作所の中にある、社員寮を改装した建物に連れて行かれ、その中の一室の適当な席に座らされた。
それぞれ名前程度の自己紹介をし、作業についての説明を受ける。
ラインから流れてきた携帯電話のボタンの位置やアンテナがしっかり刺さっているかチェックする。
そんなライン作業をするものだとばかり思っていたのだが、「試験書に則ってソフトの動作確認をし、バグを報告する」とのこと。
初めて自分の仕事を理解することができた。

説明が終わった頃、ちょうど昼休みの時間になったので、上司を先頭に全員で食堂に向かう。
古びた会議室のような食堂に入ると、山積みになったプラスチックの弁当箱があり、それを取って食えとのこと。
弁当箱を開くと、酸っぱい匂いがした。
恐々と口に含むと、やはり結構まずかった。
ご飯は冷えており、おかずもやたら酸味がきつかったが、「さすが大企業やな。昼飯が支給されるなんて」と感心しながら食った。
月末に請求がきてあせった。

作業部屋に戻り、これから使う自分のデスクトップパソコンを組み終える。
そして、俺は電源ボタンを押した。
この時、俺、24歳。167㎝60㎏前後。

※この記事は、2019年1月17日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする