(313)ブレーキを修理してもらう-1

ひとり暮らしを始めて15年は経つ。
西宮市に住んで15年は経つ。
このブログを通じて、旧西宮砲台や新西宮ヨットハーバー、鳴尾浜球場を紹介し、「そろそろかな」と俺は考えていた。
「そろそろ、西宮市から観光大使の依頼があるんちゃうんかな?」と。
先日、郵便受けに手紙が入っていたので、「やっときたか」と思ったが、西宮市の水道局からだった。
「水漏れしていますよ。パイロットが回ってますよ」と。

「面倒くさっ」。
工具を借りに、知り合いの元に走る。
知り合いは、昔、土木の仕事をしていたからなのか、辞めた今も工具を揃え、工具を大事にしている男だ。
こういう時、本当に頼りになる。
以前も、ロードバイクのクランクを外すため、ゴムハンマーを借りた。

「あのですね、水漏れしている箇所があり、パッキンの劣化が原因やと思うので、モンキーレンチを貸してくれませんか?」。
「別にええけど、業者にお願いした方が早いんちゃうん?」。
確かにその通りなのだが、俺は自分で処理したい。
「金がもったいない」という気持ちもあるが、それよりも、工具を使って自力で何とかしたいのだ。

もともと、俺は工具に興味は無い。
普通に暮らしていて、触る機会もほぼ無かった。
「中学の技術の授業で、何か作る時に使ったな」。
その程度だ。
別に機械いじりが好きでもないし、面倒くさいことは他人に任せて楽をしたいと考えるタイプ。
だが、今回は自力で解決したくてウズウズする。
その理由、自分ではなんとなくわかっている。
ネットで調べてロードのペダルを交換したり、ワイヤーを調整したり、バーテープの交換をしたり。
何かこう、細々したことが好きになった俺。
そして、自力で出来ることは自力でしなくては気がすまなくなった俺。

ただ、ロードの修理において1点だけ「ほんまに俺がしても大丈夫?」と思う箇所がある。
去年だったか、サイクリング中、派手にこけてしまい、後輪のブレーキ(左)がおかしくなった。
ブレーキが効くことは効くのだが、左手の中指と薬指を一度手前に引いた後、もう1段階グッと引かないと効かない。
どこか破損している。
「ネットで調べて、自分で処理したら何とかなるやろ」。
「どうやら、ワイヤーか?」。
最初はそう考えていたが、「素人のしょうもない自信でブレーキの修理をするんは、ちょっとやばいんちゃうかな?」と思うようになった。
「プロの人に直してもらった方が安心やわ」。

だからと言って、「ブレーキ、見てほしいんですけど」と近所の適当な自転車屋に行っても、「うちで買った自転車以外は修理しない」と言われる可能性がある。
家からロードを押して行ける距離で、持ち込みOKの店があるか調べたところ、2軒あった。

うち1軒、店舗Aは、何度も前を通ったので、どんな店なのか想像がつく。
あまり大きくない店で、パーツやアクセサリーが豊富に取り揃えられている感じではない。
店の外から見た印象だと、ローラー台に乗って脚を回している人と、その傍らで指導するスタッフがいたので、コーチングをメインとしたお店だろう。
ネットで店舗情報を確認すると、持ち込みの修理も対応している。
が、問題がひとつ。
それは、店がいつ開いているかわからないことだ。
「行ってみたら閉まってました…は困るよなぁ」。

「もう1軒の方、店舗Bにしよかぁ」。
この店については、存在すら知らなかった。
何度か近くを走ったことはあるのだが、視界に入らなかったようだ。
ネットで調べたところ、イベント参加や新商品が綴られた店主のブログがあり、それに目を通し、店主の人柄を垣間見ることが出来た気がする。
「この人、親切に対応してくれそうやな。店舗Bに決定」。

仕事を終え、ロードを取りに家へ帰る。
そして、「さて、修理してもらいに行こか」。
ロードを担いで家を出ようとしたが、「ちょっと待てよ」。
依頼するのはブレーキの修理なので、お店の人はブレーキとワイヤー以外は触らないだろう。
ただ、念のために、全体の清掃をしておきたい。
いくら料金を払うにしても、自分のロードを修理してくれる人の手を無駄に汚したくない。

過去に、自転車仲間と一緒に走った際、チェーンが外れたとか輪行バッグに収納できないという理由で、俺が手助けしたことがある。
仲間なので困っていたら助けるが、清掃する習慣が無い人のロードを触ると、軍手をしても俺の手のひらは真っ黒。
「助けてくれた人の手を汚すって、どういうことやねん?失礼やろ?おかしいやろ?」。
強くそう思った。
他人を、その時の俺と同じ気持ちにはさせたくない。

フレーム全体を拭き、チェーン、クランクなど各パーツにクリーナー。
「めっちゃ綺麗になったわ」。
ロードを担いでマンションの1階に降りる。
と、雨が降ってきた。
清掃したばかりのロードを雨に打たれるのは困る。
「さっきまでの作業、何の意味があるねん?」となる。
仕方がない。
次の日の天気予報をチェックし、「明日にしよ」。
俺は部屋に戻って焼酎を口に含み、万年床の上でゴロゴロした。

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