(326)サイクリングとアニマル浜口。

西宮から神戸まで走った帰りのこと。

行きは2号線を走って、何度も何度も信号に引っ掛かり、そして路線バスと微妙な駆け引きを繰り返し、精神的にかなり疲れた。
また、平均速度は、ママチャリよりちょっと速いぐらいのレベルで、俺の心はボロボロ。

これ以上、自分を傷付けたくない。
「さすが俺。やっぱり俺ってすごい!」という気分で家に帰りたい。
となると、2号線は避け、阪神間の南側を走る43号線。
これを選択するしかない。

トラックがびゅんびゅん飛ばしている43号線。
確か、ついこの間も、43で原付がトラックにひき逃げされたニュースを見た。
まぁ、そんな少し怖い道だが、2号線に比べると走るのには適した道だと思う。
路上駐車している車などほぼ見掛けないし、信号もそれほど(2号線ほど)多くない印象がある。

「うわぁ…」。
路上駐車の車と信号が少なくても、「渋滞やん…」。
また北に走って2号線に向かうのも面倒なので、このまま43を西宮へ進む。
が、また予想外の事態。
前を走るクロスバイクが遅すぎて、俺までスピードを出せない。
「追い抜こうか」と思っても、渋滞のため、抜けるスペースがない。

後ろ姿しか見えないので、クロスの年齢はわからないが、男であることは間違いない。
小型のサイクリングバッグを背負い走る彼は、俺にとって…存在自体がストレス。
「もっと脚を回せ」。
「もっと、もっと!」。
「何故、回すのを止めた!?」。
「5回回して10秒休み?なんちゅーペースやねん!?」。
サイコンに目を移すと、「時速21㎞」。
「信号の無い直線で21㎞!?もっと速く!」。
俺はイライラ。
「回せ!脚を回せ!」。
「気合いを入れて回せ!」。
「気合いや!気合いや!」。
「まだ気合いが足らんな!気合いや!」。
「もっと、もっと頑張れ!」。
「気合いや!」。
「休むな!」。
「自分に負けるな!」。
「自転車みたいなもんはやなぁ、クランクを回してたら進むようにできてるんや!」。
「そうや!赤信号以外では休まず回すんや!」。
「ええ感じや。苦しいのはわかる。でも、頑張れ」。

イライラしながら念じていると、ふと、自分がクロスに乗っていた時のことを思い出した。
「姫路に行く途中、雪降ってきて最悪やったなぁ」。
「淡路島に行って洲本城へ登る時、めちゃめちゃ疲れたよなぁ」。
「遠出して、ボロボロになって帰って来たことが何度かあったなぁ」。
そうだ。

前を行くクロス乗りの後ろ姿を見つめる。
「俺もクロスに乗っていた時に、同じ苦しみを感じた。でも、大丈夫や。ただひたすら脚を回せ」。
「頑張れ。ここまで何㎞走って来たか知らんけど、ボロボロになってもええ。それはいずれ自信になる。とにかく、今、頑張れ」。
だんだんとクロスを応援したくなってきた。
と言うか、もう、ファンになりそう。
「頑張れ」。
「気合いや」。
俺の念が通じ、そして、それが鬱陶しかったのかはわからないが、クロスは左折してどこかに消えた。

名残惜しいが(全然知らん人やけど)、ここからは俺ひとりの世界だ。
進路を塞がれることなく直進。
ちらちらとサイコンに目をやると、「時速36㎞?なかなかやんけ」とニヤニヤし、スピードが落ちてくると「気合いや!」と自分を発奮させる。
と、あっという間に家に着いた。

結果的に、平均時速はクソみたいなもんだったが、俺が速くなるために必要なもの(人)がわかった。
それは、アニマル浜口だ。
アニマル浜口をコーチとして雇いたいと思う…とか言って。

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