(355)BianchiのBERGAMOを買うBさん-3

サイクルベースあさひの山幹西宮店に向けて、Bさんの運転で車を走らせたが、俺はふと気付いた。
「Bさん、そういや、ここを少し進んだところにもありますよね。あさひ」。
同じあさひの臨港西宮店だ。
「そうですね。臨港線のところですね。そこに行きましょか?」。
「いやいや、山幹の方がBさんの家に近いので、メンテナンスのお願いとかする時に便利でしょう。それに、『土曜に実物を見に伺います』と電話までしてもうてるし」。
「でも、ちょっと寄って行きたいですね。寄りません?」とBさん。
「わかりました」と言いながらも、「その場その場のノリで生きてる人って、接するの難しいよなぁ」と悩む俺。

「あさひ臨港西宮店に寄る」と言っていたのに、何故か通り過ぎ、また戻ってから車を駐車場に止める。
「何がしたいんやろ?」。
いちいち意味がわからない。

臨港西宮店には何度か行ったことがある。
スポーツバイクが2階に陳列されているのを知っている。
ので、入店してすぐに階段を上がった。
ロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイクと、色々な種類のスポーツバイクが置かれている中、チェレステが際立って見える。
「あそこですわ」。
Bianchiコーナーに足を進めると、早速あった。
柱に吊られているBERGAMO。
「これですね。値札には、サイズ500って書いてますけど、Bさんには460がいいかなと思いますわ」。
「では、山幹店で460買いましょう。行きましょか」。

車に乗り込み、また移動。
車内では、職場の話や乗鞍の話をしながらも、俺は別のことを考えていた。
「さっき見たBERGAMO、思ってたよりいいやん」。
「乗ってないから見た目でしか判断でけへんけど、チェレステがすごく映えてたな」。
「バーテープが黒で、締まって見える印象も受けたし」。
「細かいところは全然違うけど、50mぐらい離れて見たら、俺が乗ってる3年ほど前のARIAとあんまり変われへんよな」。
「あれで10万円もせえへんって、すごいわぁ」。
「俺がロードに乗り始めた頃、Bianchiであのルックスで10万未満やったら、買ってたよな」。
と、BERGAMOに感心しつつ、Bさんのトークを適当に捌いていると、20分ほどで着いた。
あさひの山幹西宮店。

2階のスポーツバイク売場の隅、Bianchiコーナーに向かうと、Nirone、sempreはあるが、BERGAMOは無い。
ただ、サイズ460のクロモリロードがある。
「この前、ここに電話した時、『あさひさんとBianchiの共同開発のロードで460』と俺は言ったが、もしかしてこれのこと?」。
「『クラシカルなタイプですね?』と店員さんは言っていたが、確かにこのクロモリロードはクラシカルや」。
「でも、違うで。これちゃうで」。
「アルミフレームでカーボンフォークのロードをBさんに勧めたのに、これは違うで」。
俺は一瞬パニックに陥ったが、落ち着くことを心掛け、Bさんに説明。
ちなみに、帰ってからネットで調べたところ、Bianchiとあさひの記念モデル「Campione d Itaria」というクロモリロードが存在した。
説明が不十分だった俺が悪い。
すみません。

「店員さんに事情を説明してきます。『見たかったのはこのモデルじゃありません』って」。
Bさんは跳ねるように階段を下り、1階のレジに向かった。
基本、この人は人とのコミュニケーションが好きなのだろう。
相手が迷惑に感じても。

眼鏡を掛けた若い男性店員と共にBさんが戻ってきた。
電話で中途半端な説明をした俺は、何かバツが悪く感じ、特に用事も無いのに他の売場をウロウロ。
ジャージやペダル、ライト、シューズを見ていると、「意外!」と感じた。
俺の中では、サイクルベースあさひというと、「ママチャリが中心でスポーツバイクに関しては安目のラインナップが多い。そして、アクセサリーもおまけ程度にしかない」だったが、「そうでもないわぁ」、「アクセサリー、けっこう充実してるやん」。
山幹店の実力を目の当たりにする。
と、しばらくしてBさんに呼び出された。

店員さんに、「意思の疎通がしにくい適当なことを言ってしまい、すみませんでした」と口にしたのか態度に出したのか覚えていないが、俺は申し訳ない気持ちでいっぱい。
とにかく、「目当てのロードは臨港西宮店にあったので、そちらに伺います」と店員さんに伝えていると、横からBさんが何かわめきだした。
しゃべらないと死ぬ病気なのだろうか。

「ロードは臨港西宮店で買います。それでね、シューズとペダルについてなんですけどね」とBさん。
「うわぁ。ややこしい展開になってもうた…」と俺は後悔する。
あらかじめ、購入するロードにはペダルが付いていない旨をBさんに説明したのだが、「今乗ってるマウンテンバイクはSPDでしょ?ええ機会やからSPD-SLペダルを買ったらいいんちゃいます?」と、俺は余計なアドバイスまでしていたのだ。
店員さんとBさんがシューズとペダルの売場に行き、俺も後を付いて行く。
ふたりの会話を後ろで聞いていると、Bさんがサービス精神のつもりなのかはわからないが、無駄に話しまくり、収拾がつかない。
何かと待ち時間が多い俺としては、疲れてきた。

「さっさと終わらせよう」と思い、俺も口を挟む。
「Bさんは今までSPDペダルを使ってましたけど、シューズはSPD-SLも対応してるタイプなんですかね?」。
「わからないです。ただ、ここのお店でビンディングシューズを買ったので、同じ物がまだあれば、対応してるかどうか確認できます」。
たまたま売場に同じシューズがあったので、確認。
SPDのみ対応。
「となると、SPD-SLにしようと思ったら、ペダルもシューズも買わなくてはならないですね」。
「そうですね」。
俺は、Bさんのせこい性格を知っている。
「なら、出費を抑えましょう。SPD-SLは無しで」。
「わかりました」。
「ただ、新しく買うロードにはペダルが付いていない。で、今乗ってるマウンテンバイクのSPDペダルを新しいロードに移行させる。でしょ?」。
「はい」。
「そのパターンを想定し、今日はBさんに貸そうと思ってペダルレンチを用意しています。鞄の中に入れてます」。
「わざわざありがとうございます」。
「でね、お貸ししようって考えてたんですけど…」。
このBさんは、物を大事にしない。メンテナンスなんてまるでしない。
油まみれのチェーン、元は白なのにグレーとブラックが混じった迷彩色のような、不潔なマウンテンバイクに乗っている。
「ペダルレンチを貸したところで、Bさんは面倒くさがってペダルの付け替えなんてしないですよね?」。
「…」。
「なら、ロード買うのと同時にSPDペダルも買いましょうよ。その場で店員さんにペダルを付けてもらいましょう」。

山幹西宮店から臨港西宮店に再度伺い、お目当てのロード、BianchiのBERGAMOを買うついでにSPDペダルも買えばいい。
そんな流れにもっていったが、内心、引っ掛かるものがある。
電話で話し、実際にお店で会うと丁寧な対応をしてくれた眼鏡の男性店員さん。
「彼から何か買いたい」と思うのが浪花節というものだ。
Bさんが口を開いた。
「では、ロードは臨港西宮店で買いますが、SPDペダルはここで買います」。
心の中で、「ちょっと見直したぞ。ええとこあるやんけ、Bさん」。
「有り難うございます」と店員さん。
「ロードバイクをご購入頂くと同時に、各種装備、アクセサリーもお求め頂ければ、割引の対象となります。ロード本体はあさひの別店舗(臨港西宮店)で購入されても、こちらで購入されたペダルも割引対象とさせて頂きます」。
率直に、「めっちゃラッキー!」と思った(俺が買い物してるわけじゃないけど)。
また、「あさひってすごいよな。あさひの他の店舗であっても適用される割引サービスがあるとは」。
感心。

サイクルベースあさひ山幹西宮店では、SPDペダルのみを買った。
そして、もう一度向かう。
サイクルベースあさひ臨港西宮店へ、BianchiのBERGAMOを買いに。

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