(69)サイクリングロードの橋脚で壁当てをする。野球と俺。-3

ペコン、ペコン、ペコンと、しょぼい音が鳴り響く。
サイクリングロードの橋脚に向けて、ボールを投げ続けていると、ふと思う。
「何をしてるんやろ?俺は」と。
ロードバイクで遠出している時にも、同じことをたまに思う。
クソ暑い中や大雨の中、仕事でもなく、1円の得にもならない非生産的なことに必死になっていると、我に返る瞬間があるのだ。
そして、大人の階段を下っている感覚に陥り、それが快楽になる。
壁当ても、肘や肩や腰や膝が少々痛かろうが、体を動かすことで気分は良くなるし、野球は単純に楽しい。

俺が真面目に野球を始めたのは、小学校3年の頃。
確か、ゴールデンウイーク中だったと思う。
それまで、プロ野球はテレビでなんとなく観ているだけだったし、学校が終わってから近所の公園で友達とする野球も、特に楽しいと感じなかった。
そんな俺が少年野球を習い始めた理由は、肥満である。

もともと好き嫌いが多く、あまり食に興味が無い俺は、ガリガリの子供だったが、この頃、何故か急に太りだした。
母親はそれを心配し、俺に何かスポーツをさせたくなったのだろう。
俺の友人に少年野球チームに入っているSというのがいて、Sの母親を介し、俺もそのチームに入れようと画策した。
正直、俺は乗り気ではなかった。
まず、塾に通っている上に野球まで習わされると、単純に疲れる。
遊ぶ時間が減るのも嫌だ。
それに、俺は野球がそれほど好きではない。
「なら、一度練習に参加するだけしてみなさい」と母親に言われたが、交換条件として、カブトムシを買ってもらうことで手を打った。

初参加の当日、集合場所に行くと、キャッチボールも何もせず、チーム全員が車に乗せられた。
どこに連れて行かれるのか、何をするのか聞かされていない。
こっちは不安で仕方がない。
まったく土地勘の無い、全然知らない町で車から降ろされ、わけがわからなくなった。
少し歩き、グランドに着いて、先輩たちの試合が始まる。
やっとここに来た意味を理解した。

小学校は同じでも、全く面識の無い先輩達の応援をし、同学年のメンバー数人と冗談を言い合い、野球の練習らしい練習など一切せず、無事にその日は終わった。
練習に参加したとは言い難いが、母親には約束通りカブトムシを買ってもらい、ご満悦の俺。
ところが、プラスチックの虫かごの中でスイカを食っているカブトムシを観察していると、異変が起きた。
急に交尾が始まり、俺は絶望する。
交尾の後、カブトムシがすぐに死んでしまうかも知れないからだ。
「飼っていきなり死ぬんかよ…」と、冗談抜きで俺は涙を流した。
俺の野球人生の初日は、野球どころの騒ぎではなくなった。

※この記事は、2019年2月28日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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