(72)サイクリングロードの橋脚で壁当てをする。野球と俺。-6

壁に向かってボールを投げ、跳ね返ってきたボールをキャッチしても、何か味気無い。
グローブとボールをサコッシュに直し、ビンディンシューズに履き替え、サドルをまたいで、ペダルを踏む。

むなしさと不安を抱きながら、ロードバイクに乗り、家に向かってサイクリングロードを走るのが、日課のようだ。
その不安の元となるのは、人に対してボールを投げていないこと、人が投げたボールを受けていないこと。
40を過ぎて、「僕と野球の練習をしませんか~?」と友人にメールするのは抵抗がある。
アホと思われる気がしてならない。

だが、このまま壁に向かってボールを投げていても上達するとは思えないし、上達しないまま試合に出て恥をかくのも嫌だ。
「ここは、あらゆる人脈を駆使して、練習相手を探そう」と決意し、近所の飲み友達、自転車仲間、大阪にいる昔からの友達数名に声をかけてみた。
「自分は、ある理由で草野球の試合に出るのですが、それまでに体を作っておきたいと考えています。もし、時間に余裕があれば、そちらの都合がいい場所までグローブとボールを持ってうかがいますので、練習相手になってもらえませんか?」。
数人にメールをし、口頭でも伝えた。
それが、意外なことに、みんな「いいよー」と応じてくれる。
俺は以前、飲みに誘われても遊びに誘われても、仕事があるせいで断ってばかりの時期があった。
それで、友達を不愉快にしたり、縁が切れたこともある。
今は、まだ時間に余裕があるので、「誘われたら、よほどのことがない限り行く」と決め、人間関係を大事にしてきた。
今回、練習に付き合ってくれる人が多いのは、その賜物なのかも知れないし、また、彼らに対し、素直に感謝する。
ただ、「世の中には、暇で奇特な人もいるもんやなぁ」と思ったりもする。
誘っている俺が言うのもなんだが。

さっそく、近所の公園で、知り合いとキャッチボールをすることになった。
「やっと人間を相手にできる」と俺は前日からテンションが上がりまくり、事務所でひとり、暇があればシャドウピッチングを繰り返した。
キャッチボール当日、目覚めとともに激痛が走る。
肩だ。
筋肉痛だ。
先が思いやられる。

昼過ぎには仕事を終え、ジャージに着替えて、公園でキャッチボールをした。
相手の胸に投げているつもりだが、胸以外のところばかりにボールが行く。
「壁に向かって投げるのとは、感覚が全然違うなぁ」と思った時、相手の投げたボールが俺のヘソあたりにきた。
俺はグローブを構え、膝を折り曲げ、前屈みになってキャッチ。
「コキ」と膝が鳴った気がする。
膝が死んだ瞬間だった。
黙ってキャッチボールを続けたが、結局、30分ももたず俺はギブアップ。
中華料理屋に行って、餃子を食いながら、昼間からビールを飲みたくなった。
そして、実際、ひとりで中華料理屋に行った。
しばらく、キャッチボールはしたくない。

※この記事は、2019年3月3日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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