(80)自転車屋に行った帰り、懐かしむ。ナンバ球場のヤジ。-1

俺がロードバイクに乗り始める少し前から、世の中は、小さなロードブームになっていたようで、町の自転車屋とは違う、スポーツバイクに力を入れたお店が増える傾向にあった。
ブームから遅れて(別にブームを意識したわけではないが)、その流れに合流した俺は、ロードに乗ることを楽しみ、また、スポーツバイク専門店をうろつくことも楽しみのひとつになった。

ある日、自転車雑誌を読んでいると、難波にそこそこ大きなお店ができたという記事があったので、「一度行ってみようか」と、訪れてみた。
品揃えと、推しているメーカー、値段。
興味がある点を中心に、ざっと見てまわり、話しかけてきてくれた店員さんと少しコミュニケーションをとって、俺は何も買わずお店を出た。

駅に向かって歩いていると、なんばパークスがある。
変わった形をした商業施設。
実家は難波から近いが、俺がひとり暮らしを始め、難波にあまり行かなくなってから出来た施設なので、身近に感じない。
ただ、子供の頃、ここにナンバ球場という南海ホークスのホームグラウンドがあった。
それはとても思い出深い。

小学校の3年生で少年野球チームに入り、4年にあがる頃には野球をやめた俺。
親が、勉強させようと、電車で通わなくてはいけない所にある進学塾に俺を入れた。
しかし、夏頃には、俺は完全にドロップアウト。
下手したら京大や阪大に行くような子供たちと、学校ですらたいして成績がよくない俺が、一緒に勉強するには無理があったのだ。
いつも塾に行くふりをして、とりあえず駅まで行き、環状線を何周もしたり、駅のベンチでダラダラしながら時間を潰して、暗くなってから家に帰る。
土曜日は、昼から塾に向かうふりをするが、これまたさぼる。
だいたい、ナンバ球場で野球を観ていた。

当時のパ・リーグは、絶望的に人気がなく、PLの清原が入団した西武のみ、少し集客力があったかと思う。
南海に関しては、本拠地がある大阪ですら、かなりの物好きしか応援していなかったのではないだろうか。
スッカスカのスタンドで野球を観る。
俺は南海ファンではないが、野球を観るのは楽しかった。
ちょっと小腹が空いたなと、売店に行ってみると、今の球場のように、弁当屋、お好み焼き屋、ケンタッキーなど多種多様なお店があるわけではなく、スタンド毎に「売店」がひとつあるだけ。
しかも、メニューが、ビールとスルメとコアラのマーチ。
確か、この程度だったと思う。
やる気があるのかないのかわからない売店だ。

阪神ファンの俺ではあるが、思い返すと、初めて生で野球観戦をしたのは、甲子園ではなくナンバ球場だった。
4月の日曜日に叔母が連れて行ってくれたのだ。
結果が決まるシーズン終盤ではなく、開幕して間もなくだったので、当時、激弱の南海でも、優勝を期待するファンがいたのだろう。
球場は満員ではなかったが、妙な熱気を感じた。
相手は近鉄バファローズ。
試合は近鉄が勝ったが、スコアは覚えていない。
ただ、迫力は覚えている。
ただのレフトフライでも、「おー」と声を出し、前のめりになり、俺は夢中になって野球を観た。

※この記事は、2019年3月10日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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