(85)京セラドームで草野球をする。イメージトレーニングはパワプロ-4

新生 名門 Fラン大学付属高校 野球部の快進撃は続く。
練習試合において、弱小高校にもそこそこの高校にも、守り勝つ野球ができた。
投手が踏ん張り、野手が守り立て、勝ち方を知るチームに生まれ変わったのだ。

そんな矢先、バレンタインデーの日、数人の選手がチョコレートをもらったと、うかれているではないか。
中には、彼女ができたやつもいる。
監督である俺が禁欲的な毎日を送っているにも関わらずだ。
選手を呼び出し、「今のお前は、女にうつつをぬかしている場合ではない。色気付くのは、夏の地方大会を制し、夢の舞台、甲子園に立ってからにしろ」と説教したい。
女とは、強制的に別れさせたい。
だが、そんなコマンドは無かった。

春になると、部を引退していた3年生が卒業。
中には、プロ入りした選手もいる。
3年生とは入れ替わりに、1年生が入ってきた。
そこに、ひとりビックネームがいるではないか。
「稲葉」
元ヤクルト、日ハムで、今は侍ジャパン監督のあの人を彷彿させる名前。
能力値を確認すると、攻走守、すべてにおいて高い。
いきなり主軸になる人材である。
過去に、今岡という選手がいた。
元阪神の天才打者と同姓だ。
彼も1年生、入った時点でバケモノとしか言い様がない能力があり、試合でもその鬼畜っぷりを発揮した。
だが、監督である俺の未熟さのせいで、彼の代に甲子園出場は果たせず、俺なりに罪悪感が残った。
優秀な人材を最高のステージに導くのが、俺の責任なのだ。
「稲葉、お前を甲子園に連れて行ってやるからな。絶対に」と、俺は心に誓った。

練習を重ね、それが能力に反映される。
稲葉の成長を楽しみに見守るとともに、他の選手もチェックしたところ、偏差値29の選手がいるではないか。
「そう言えば、テストの度に結果が悪くて落ち込み、練習効率が下がる選手がいたな」と思ったが、それにしても、偏差値29はひどすぎる。
狙って叩き出せる数値ではない。
今まで何を考えて生きてきたのだろうか?
彼の人生を考えると、「野球をしている場合ではない」と思うのだが。

梅雨が明け、待ちに待った戦いの舞台が、今、そこにある。
天才稲葉、女にうつつをぬかすやつ、偏差値29たちを率いて、夏の予選が始まるのだ。
新チーム結成から今に至るまで、かなりの手応えを感じている。
後は結果を出すだけだ。
耳障りな蝉の鳴き声を浴びながら、選手たちはベンチから飛び出し、グラウンドに整列する。
「プレイボール」と審判が告げ、始まった。
1回戦だ。
戦いの火蓋は切って落とされたのだ。

※この記事は、2019年3月15日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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