(86)京セラドームで草野球をする。イメージトレーニングはパワプロ-5

夏の地方予選1回戦。
進化をとげた新生 名門 Fラン大学付属高校 野球部にとっては、とるに足らない相手であった。
投手がその実力を発揮し、野手が鉄壁の布陣で、相手の攻撃を抑え込む。
結果だけではなく、内容としても完封できたと思う。
俺のやりたい野球を実現してくれた選手たちに、素直な気持ちで感謝した。

2回戦からも、ロースコアの試合が続いたが、ギリギリのところでホームランが出て逆転勝利。
また、圧倒的劣勢でも、「魔物」を発動することで、コールド勝ちを収め、流れは完全に我が野球部に向いていると確信する。
ちなみに、「魔物」とは、試合を崩壊に導く、選手の固有戦術である。
選手の性格によって、「ファイト」や「熱血」など必殺技のようなものがあるのだが、内気な性格の選手には、固有戦術「魔物」が付与される。
これを発動すると、相手チームがエラーを連発してくれるのだ。
バットにボールを当てさえすれば、相手がエラーをしてくれて、大量得点が入る。
それまでの試合の流れを、完璧にぶったぎるジョーカーである。

試合をすれば、勝つ。
何をしてもうまくいく。
選手たちも、そんな感覚に陥っただろう。
勿論、俺もなのだが、あまりにうまくいきすぎて怖い。
落とし穴が待ち受けてそうで、不安になる。

ついに迎えた決勝戦。
「頑張った結果、ここまでこれたじゃないか。俺も選手たちもよく頑張ったよ。もう充分じゃないか」と、俺は弱気になり、後々傷付かないよう自分に保険をかけようと思ったのだが、監督の俺がこれではいけない。
選手たちを信じよう。
新チームになってから、自分たちの野球を貫き、格上の相手にも勝利をもぎ取ってきたではないか。
選手を信じよう。
自分を信じよう。

完封負けをくらった。
育て上げた3年生が、たった1敗、僅か1敗を喫しただけで消え去ってゆく。
あまりに残酷な世界だ。
だが、我が野球部には、稲葉が残っている。
彼を中心に、最強チームを作るのだ。
秋も冬もただひたすら走り込み、投げ込んだ。
コツコツと練習を重ね、俺が理想とする、落合中日野球ができるチームに近付く。

4月になると、新入生で田島という投手が入部する。
あの中日の投手を彷彿させる名前だ。
頑張れ、タジマジン。

昨年の夏、決勝まで進んだ我が野球部。
練習試合をしても、そんじょそこらの相手には、勝って当たり前。
守り勝つ野球をしつつも、稲葉が打線を牽引してくれるので、攻撃力も上がった。
昨年以上の手応えを感じ、「今年こそは、夢の甲子園」との思いを胸に、耳障りな蝉の鳴き声を浴びながら、選手たちはベンチから飛び出し、グラウンドに整列した。
プレイボールを審判が告げる。
1回戦だ。
戦いの火蓋は切って落とされた。

※この記事は、2019年3月16日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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