(447)甲子園と俺-3

レフトポール際にふわふわっと上がった糸原の打球は、そのままレフトスタンドに吸い込まれた。
3-1で阪神逆転。

子供の頃、大阪市内で育った俺としては、甲子園は特別な場所。
「どうせ行くなら、阪神が勝つ試合を観たい」。
そう思ったものだが、15年ほど前から西宮市でひとり暮らしを始めてからは、「甲子園なんかすぐそこやから、いつでも行けるわ」という感覚になり、足を運ぶことが減った。
この日、甲子園のスタンドで野球を観たのは2、3年ぶりかと思う。
まぁ、「どうせなら勝ってほしい」という気持ちは今も強いけど。

阪神先発の秋山は、ランナーを背負っても丁寧に投げ続け、堂林に打たれたホームランの1失点に抑えている。
「秋山、このまま頑張ってくれよ」と心の中で呟いた後、「さてと、ビール買いに行こ」。
席を立ち、売店に向かう。

ビールを買い、「食べ物も何か欲しいな」と売店がひしめく通路を歩いて回った。
甲子園には、「三大グルメ」があり(俺の知らん間に)、ひとつは「甲子園焼きそば」であると。
食ったことないけど。
ふたつ目は、「甲子園カレー」。
ご飯の量が少ないのが、俺としてはいまいち…。
そして最後に「ジャンボ焼鳥」。
これこそが甲子園の名物であり最強グルメ(主観的には)。

小学生の頃、親が取引先から甲子園のボックス席を貰い、家族で何度か訪れた。
母親はなんとなく巨人ファンという程度で、野球にはあまり興味を示さなかったが、野球好きである俺と父親は「腹減った。野球みたいなもん、どうでもええわ」と売店に行っては席に戻り、売店に行っては席に戻り。
まともに野球観戦しているのは母親だけで、俺と父親は常に何か食ってるか飲んでいた。
その時、甲子園における俺の大好物は「ジャンボ焼鳥」で、1試合に3本は食っていたと思う。
値段は少し高いが(当時250円やったかな?)、サイズは申し分無い。
もちろん味も。

「こんなデカい焼鳥をぺろりと食ってたら、そら肥満児になるわな」。
昔を思い出しながら、「鳥、1本」。
売店の姉ちゃんに注文。
以前は、焼きたての焼鳥を透明のビニール袋に入れて「はい、どうぞ」だったが、今はカップに入れて提供。
妙にお洒落になった気がする。
泥臭い方が美味そうに見えるのにね。

席に戻りグラウンドに目をやると、サンズのタイムリー、大山の2ランで6-1。
「このペースやと阪神が勝つな」と思ったが、阪神にはに何度も何度も裏切られている。
あまり傷付きたくない。
「期待せんとこ。それより焼鳥や」。

ビールを飲みながら焼鳥を食い、野球観戦。
「幸せやわぁ」。
ぼんやりとそう感じながら、ぼんやりとグラウンドを見渡す。
近くにちょうど売り子がいたので、ビールお代わり。
また幸せに包まれたが、「あぁ、明日、体重計に乗るん怖いわぁ…」。

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