(99)今、ロードバイクに乗って行きたい町は、岡山。そして尾道。-1

尾道に行きたい。
来週か再来週、時間を作って尾道に行きたい。
もちろん、ロードバイクに乗って。

子供の頃、大林宣彦監督の「転校生」という映画をテレビで観たことがある。
男子中学生と、転校してきた女子中学生の体と心が、ひょんな切っ掛けで入れ替わる。
小さい俺でも楽しめるストーリーなのだが、強烈な印象として残ったのが、尾道の町並み。
迷路のように入り組んだ、細く曲がりくねった道は、子供にとって秘密基地を連想させ、好奇心を刺激してくれた。

大学に入り、広島に旅行する機会があった。
当時は、今と違い、調べ物を携帯電話でweb検索することができず、紙の観光ガイドを読み、観光名所をチェックしていた。
その時、ふと「何かで見た景色があるな」と思い、俺はページをめくる手をとめた。
神社と階段の写真。
「転校生」の舞台だった。
一緒に旅した者に、「尾道に寄ろう」と言い、時間の関係で散策はできなかったが、尾道ラーメンを食べ、腹と心を満たした。

社会人2年目、クソ暑くクソ忙しい8月のこと。
表向き、土日休みの体だが、職場は仕事で溢れかえり、混乱しきっていた。
数週間休み無しの従業員もいる。
8月末に、担当している携帯電話が出荷されるので、7月8月とは、嫌でもドロドロになるまで残業し、土日も出勤しなくてはいけない。
そこで、助け舟が出た。
上からの指示で、待ちに待った「スクランブル体制」だ。
平日も土日も関係無く、ほとんどの従業員は出勤しないといけないが、ローテーションを組んで、それぞれが少しでも休みを確保できるようになった。
俺は、たまたま平日に2連休をもらえ、天下を取った気分。
ただ、最悪、職場から電話一本あれば出勤しなくてはいけない。
それは、なんとか回避したい。
とにかく早く、できるだけ早く大阪から離れることを考えた。
「どこに行こう?」。

大阪駅の近くにある本屋で、暇潰し用の本を大量に買い込み、俺は電車に乗った。
人生初のひとり旅。
一刻も早く、あの尾道に逃げるのだ。
姫路駅だったか赤穂駅だったか、そこそこ遠くまで逃げることができたが、そこから先の電車が悲惨。
ゼミ旅行をしている学生の団体が車内を占拠し、激熱のノリで騒がしく、近くにいるだけで俺は汗がとまらなくなった。
冷房といっても、効果があるのかどうかわからない扇風機が、天井でチョロチョロ回り、「外の方が涼しいんちゃうか?」と思いながら、苦しみに耐え、なんとか岡山駅に着いた。

当初、ここで乗り換え、尾道まで行く予定だったが、暑いし疲れた。
岡山で一泊する。
自転車に乗ろうが電車に乗ろうが、俺に計画性が無いのは、20年前から変わらない。

※この記事は、2019年3月29日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする