(528)脚を回しながらニヤニヤ-4

タン…、マルチョウ…、ツラミ…。
自分中心にしゃべり続けるH(40代 男性 同級生)を完璧に無視して、俺はホルモンと向き合った。
「あぁ、どの部位も旨いわぁ」。
また、ニンニクの効いた塩ダレのせいで、ビールをガンガン飲みたくなる。
「お代わり下さい」。
飲んで食って、飲んで食って忙しい。

隣では、Hが何ひとつ面白くないことを発し、I(40代 男性 同級生)が相槌を打っていた。
「Go Toがなぁ」、「Go Toが」「Go Toが」。
俺は箸を動かしながら聞き耳を立てると、Hの経営する飲食店がコロナの影響でお客さんが減ってしまったと。
ただ、最近はGo To EatとGo To Travelのおかげで一時の危機は脱したと。
まぁ、俺にとって興味など微塵も湧かない話題だが、Hは気持ち良さそうに「Go Toがなぁ」、「Go Toが」「Go To」。
最近覚えた言葉を発したくてウズウズしているのだろうか?

「Go Toが」「Go Toが」「Go To」「Go To」。
散々「Go To」を連呼し、一度は落ち着いた。
しかし、「もう、さすがにGo Toネタが切れたか」と思いきや、鉄板でホルモンを焼く女性店員に「ここの店、『Go To』の効果あった?」と。
「はぁ?まだ『Go To』言い足らんのか…」。
「お前がどっか行けよ」。

コリコリを噛み、その旨さを堪能していると、「塩ダレはこれで終わりです」と女性店員。
「次は黒ダレです」。
コースの折り返し地点だが、既に十分堪能できたと思う。
Hのしゃべりさえ無視すれば、100点満点。

モヤシを鉄板に盛り、またホルモンを焼き始める女性店員。
観察していると、鉄板の下に置かれた、肉汁が溜まった小皿にホルモンを付ける。
「なるほど。これが黒ダレか」。
丁寧に丁寧に焼いてくれる彼女の姿を見ていると、「こんなもん、絶対旨いやんけ!」と思った。

「どうぞ」。
シマチョウを口に含み、「想像以上やわぁ」。
濃い味と濃い旨味。
無料のライスを注文したくなった。
ただ、ライスで腹を膨らませるとコースの最後までたどり着けないかも知れない。
「ここは悩みどころやな」と熟考していると、「ライス中で!」、「俺も!」。
HとIがライスを注文。
そして、「俺も!」。

ハート…、ホソ…、アカセン…。
黒ダレのホルモンとライスの相性は抜群で、ただひたすらがっついた。
旨さを感じつつも満腹感を得てしまい、疲れも感じる。
「とりあえず、黒ダレも食いきったな…」と安心したところで、〆の焼きそば登場。

卵を落として肉汁をたっぷりかけて、ホルモン屋ならではの焼きそばだ。
濃い甘味に、卵がマイルドさを生み出している。
腹いっぱいなのに「食いたい!」。
本能がそう訴えかけてくる。
むさぼり食うしかない。

と、自分語りのネタが尽きたのか、Hが話し掛けてきた。
「お前、今、仕事が暇なんやろ?」。
「先々週までは暇やったけど、今はバタバタしてるよ。今日も日曜やのに仕事してからここに来たんやから」。
「急に忙しなったんか?」。
「基本的にはマイペースに消化できる作業しかないんやけど、先週の水曜に仕事休んだから、それの埋め合わせをせなあかんねん」。
「水曜、どっか行ったんか?」。
「あぁ。淡路島に行ったんや」。
「どやった?」。
「朝の早くからなぁ…」。

悪の軍団に、奴隷のように働かされる淡路島の人々。
敵の虜となったリンを救うため、ケンシロウの拳が唸る。
次回、「光なき淡路島に弧拳が燃えた!爆殺五指烈弾」。
俺はもう、死んでいる…。

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