(576)ロードバイクに乗らず、電車で墓参り-2

特急に乗り込み、居心地の良い揺れを感じつつ寝ていると、40分ほど経過。
曖昧な記憶だが、泉佐野か尾崎で普通電車に乗り換え、また目をつむる。
「そろそろかなぁ」。
そう思い目を開く。
「おー、乗り過ごさんでよかったわ」。
うちの墓の最寄り駅に、もう間も無く着く。

田舎の小さな駅。
改札をくぐり、左手に自販機が並ぶ煙草屋。
その先の信号を渡ったところに餃子の王将。
子供の頃の記憶では、交番としょぼい喫茶店ぐらいしかなかったと思う。
まぁ、これでも発展したのだろう。

駅前を少し東へ進むと、ロードバイクで墓参りをする際、小刻みな信号のオンパレードで苦労する26号線だ。
この日は墓場まで徒歩なのでストレスは感じないが、「そっれにしても、ほんまに狭い歩道やで」。
ひとりで文句を言いながら、墓地に向かってとぼとぼと歩いた。

どこの田舎にでもある歩道。
歩きながら、「そう言えば…」。
ふと思い出した。
子供の頃、母親とふたりで墓参りに行った。
ふたりで墓石を拭き、花を供え、線香をあげ、駅に向かって歩いていると、「ちょっと寄ってこ」。
母に連れられてパチンコ屋に入った。
今考えると、「墓参りの後、すぐにパチンコ打ちたいもんか?」だ。
まぁ、幼少期から、パチンコを打つ親を待たされるのには慣れている。
阪神帽を被り半ズボンを穿いた俺は、隅っこの空いてる席に座り、特に苦痛を感じることもなく、なんとなくパチンコ台を眺めていたと思う。
「いい思い出、綺麗な思い出ちゃうけど、懐かしいなぁ」。
「そういや、あのパチンコ屋はどの辺りにあったっけ?」。
立ち止まり、道路沿いをキョロキョロ見回したが、どうやらもう無くなったようだ。

墓地に向けて歩く。
「確か、ここにスーパーがあったよな」。
家族で墓参りに行く際、いつも墓花を買いに寄ったスーパー。
今では完璧に消滅し、コンビニができた。

「ちょっと寄って行こかぁ」。
コンビニに入り、酒売場を物色。
酒を墓に供え、祖父に飲んでもらうのだ。
が、「祖父は酒を飲むのか?」。
悩む。
戦争が終わり祖父は南方から帰って来たが、病に冒されていたため、すぐに亡くなった。
と言うわけで、俺としては面識が無いわけで、酒を飲むかどうかわからない。
仮に飲むとしても、日本酒が好きなのか焼酎が好きなのかもわからない。
「参ったなぁ」。
結局、墓に供えた後に飲むのは俺だ。
俺の趣味を優先し、焼酎をカゴに入れた。

祖母は俺が高校1年の時に亡くなったので、生前、コーヒーが大好きだったことを知っている。
「じゃあ、缶コーヒーを買って行こか」。
そう思い、適当に缶コーヒーをカゴに入れたが、「ちょっと待てよ」。
結局、墓に供えた後に飲むのは俺だ。
俺の趣味を優先し、微糖のコーヒーを選んだ。

最後に、問題は叔父だ。
叔父は、彼が小学生になったぐらいの年齢で亡くなっている。
多分、昭和20年代のこと。
当然、面識が無い。
「参ったなぁ」。
「子供が飲むものとしては、カルピスウォーターが正解?」。
「でも、亡くなった後も、その年齢のままかどうかはわからんしなぁ」。
「死後の世界で成長し、『カルピス?アホか。どうせならビール買って来いよ』ってなるかもなぁ」。
悩む。
死後の世界など、俺にはわからない。
織田無道にでも聞いてみたいところだが、その織田無道も、もうこの世にはいない。
「まぁ、大人が飲んでも美味いよ」。
カルピスウォーターをカゴに入れた。

レジで精算し店を出る。
と、目の前の道を高速で走り去るロードバイク。
「cerveloかぁ。いいねぇ」。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする