(126)鳴門と俺。四国の片隅を走り、思い出したこと。-1

5回以上、10回未満?
正確には覚えていない。
俺は、定期的に、ロードバイクで鳴門~高松間を走っている。

知人のNさんが、鳴門に鯛を釣りに行く際、俺も車に乗っけて行ってもらっているのだが、ふたりで初めて行ったのは、4~5年前だろうか。
それも正確には覚えていない。

真夜中の2時半に、兵庫県西宮市から出発。
徳島県鳴門市には、2時間ほどで着く。
しばらく車の中でゴロゴロし、外が明るくなってくると、Nさんは渡船に乗り、釣りに出る。
俺はサイクリング。
お互い自由行動をして、充実した時間を過ごす。

ふたりで初めて鳴門に行った日、俺は鳴門スカイラインを走った。
事前に、鳴門、徳島のサイクリングに適したコースを調べたところ、多くのロード乗りがここを走破してるようなので、俺も行ってみることにした。

11号線を北に進み、海が見えてくる。
のんびりと海の景色を眺めたい気もするが、俺は山に向かって走った。
ゆるやかな坂が続く。
「この辺りが、鳴門スカイラインの入口なのか?」と思い、ひたすらクランクを回したが、登りが終わらない。
「勘弁してくれ。俺は登りが嫌いなんだ…」と、いきなりギブしそうになった。
ただ、俺にも意地がある。
登りが終わるまで、地面に足をつくのは絶対に嫌だ。
でも、苦痛で泣きそうだ。

その時、視界の左端に、駐車場とトイレを捉えた。
俺は、壁にロードを立てかけ、トイレに駆け込む。
本当は、トイレに用事は無かった。
尿意など、まったく無かった。
本音としては、登るのが嫌で、一度、地面に足をつけたかったのだ。
でも、それをしてしまうと、負けになる。
自分に負けたことになる。
なので、「休憩なんてしたくはなかったけど、急にトイレに行きたくなり、致し方なく登りを中断したんだ」と自分への言い訳を用意することにしたのだ。
トイレから出て、俺は自分に言い聞かせた。
「俺は、負けていない」と。

リスタート。
またしばらく登りが続く。
死にたい気分だ。
そもそも、夜中、寝不足の状態で西宮を出発し、早朝、鳴門に着いた時点で、俺はかなり疲れていた。
もう、登りとか下りとかどうでもよく、とにかく地面に足をつきたい。
一刻も早く、サドルから降りたい。
その時、視界の右端に、お寺を捉えた。

お寺の前にロードを止める。
箒を持ったお坊さんが近くにいたが、何か話をするでもなく、しばらく俺はその場でぼ~っとした。
「そろそろ行こか」とサドルにまたがる。
「本当は、休憩する気などなかったが、俺は御仏に導かれてここに寄ったのだ」と思いながら。
そして、自分に言い聞かせた。
「俺は、負けていない」と。

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