(587)俺は鼻炎のロード乗り

「参ったなぁ…」。
去年だったか一昨年かは忘れたが、俺はいつの間にか鼻炎になり、厄介な日々を送っている。

例えば、睡眠中。
鼻での呼吸が困難なため、口だけで呼吸を繰り返す。

と、口の中がカラカラに乾き(喉が渇くとは少し違う)、そのせいで起きてしまうことが増えた。
あらかじめ枕元に置いたペットボトルのお茶を口に流し、また睡眠状態に入るのだが、また口の中が渇き…。
そういった具合で、ぐっすり眠れない夜がある。

ロードバイクに乗っている間もそうだ。
脚を回しながら「鼻炎はやばいな」と強く感じる。
運動に際して、呼吸が困難になるのはどう考えても良くない。
また、「呼吸により多くの酸素を取り入れ、そしてどうたらこうたら…で、最高のパフォーマンスを発揮できる」と、本か何かで目にした気がする。
が、走っている間は、そんな理屈などどうにもならない。
仕方無く、鼻ではなく口で呼吸しつつ脚を回す。
と、すぐに口の中が乾き、やたらとボトルの水を飲んでしまう(喉が渇いているわけではない)。

あと、鼻炎が関係しているのかどうかはわからないが、もうひとつ。
コロナの影響で、今はサイクリング中もマスクをしている。
一応。
で、「これはこれで参ったな」と感じるのが、アイウェアがすぐに曇ること。
前が見えない。
単純にマスクのせいなのか、または、マスクをした上で、且つ鼻炎のため口から呼吸しているからなのか…検証していないのでわからないが、とにかく前が見えない。
少し走っては立ち止まり、アイウェアのレンズを内側から拭く…を繰り返すのは、本当に面倒だ。

まぁ、鼻炎のせいで不便なことが多いわけだが、「そのうち治るやろ」と放置していたわけでもない。
薬局に行って薬を買い、それなりには飲んでいる。
ただ、「今日は鼻の調子がいいな」。
回復傾向に向かっていることを実感すると、飲むのをやめてしまい、また鼻が詰まったり鼻水が止まらなくなったり。
「あかんわ。これは良くない。治るまで薬を飲もう」。
何度もそう思ったが、本来は2錠飲むべき薬を1錠しか飲まなかったり、飲むこと自体を忘れたり。

本当にだらしない。
自分でも「お前、治す気、あるんか?」と言いたくなる日々を過ごしてきた。
が、「あかんわ。薬をちゃんと飲んでしっかり治そう」。
そう心に誓わざるをえない出来事が先日あった。

緊急事態宣言後、「仕事帰りに飲み屋にでも寄ってやなぁ、ゆっくり飲み食いしよ」を楽しもうにも、20時には店を追い出されてしまう。
ゆっくり飲み食いできない。
ならば…と、コンビニで酒を買い、弁当屋に寄って帰ろうとしたわけだ。
俺は。
で、弁当屋に入り、先客は0だったのでレジに向かってすたすたと歩き、「チキン南蛮弁当をお願いします」。
と、若い女性店員は「こちらの方から調味料をお選び下さい」。
レジカウンターにシートが貼り付けられ、それに目をやると「ポン酢」と「香味醤油」。
「チキン南蛮でポン酢ってアリなん?」。
違和感を感じ、「あの、チキン南蛮弁当が欲しいんですけど」。
一応確認を取ったところ、「はい、チキン竜田弁当ですね」。
「いや、チキン竜田ではなくチキン南蛮なんですが」。
「失礼しました」。
店員は手元にあるメニューに目を通し始めた。
俺は俺で、「もしかして、この店にはチキン南蛮は無いんか?」。
そう不安に陥り、壁に貼られたメニューを確認する。
「あるやん」。
「チキン南蛮、あるやん」。
自信を取り戻した俺は、再度「チキン南蛮弁当をお願いします」。
「はぁ…。チキン竜田弁当でしょうか?」。
「いや、チキン南蛮です」。
「え…」。
声を少し大きめに「チキン南蛮です!」。
「は…」。
イライラしてきた。
顔を突き出し、「チ・キ・ン・な・ん・ば・ん!」。
そう言いながらも、自分で「え?」と思った。
俺の耳には、俺の声が「チキンばんばん」に聞こえたからだ。
「チキン」と「ばんばひろふみ」が入った弁当など、置いているわけがない。

鞄から紙とボールペンを取り出し、「チキン南蛮弁当」と書いて渡そうと思ったが、その前に店員さんが気付いてくれた。
「承知しました。チキン南蛮弁当ですね」。
彼女のファインプレーに涙が出そうになった。
本当に有り難う…なのだが、同時に、俺はそれなりに傷付いた。
また、危機感を覚えた。
鼻炎のせいで鼻が詰まってしまい、何を言っても相手に伝わらない。
人とコミュニケーションを取るのに支障がある。

「筆談の一歩手前まで来てもうたな…」。
チキン南蛮弁当が入ったビニール袋をぶら下げ、夜道を歩く俺。
これからはちゃんと薬を飲み、そして鼻炎を治したいと思う次第です。

以上

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