(140)京都へのロングライドで再会。まだ生きていたのか…寸借詐欺師。

クロスバイクを買ったのが切っ掛けとなり、スポーツタイプの自転車にはまり、かれこれ8年ほど経つ。
その間、自転車が話のネタになり、初対面の人と良好な関係を築くこともできたし、自転車に乗って遠出することで、知らない人と接することもできた。
ただ、接したくない人、関わり合いになりたくない人との出会いも、1件だけあった。

「その気になれば、どこまでも走れる」と、真面目に考えていた頃の話。
クロスバイクに乗りだし、その速さや快適さを享受した俺は、休みの日になると、よくロングライドに出ていた。

その日、俺は京都を目指して走った。
俺が住む西宮市から京都駅まで、片道で50㎞ちょっと。
「往復走っても、日帰りで行ける」と、自信満々で家を出る。
クランクを回し続け、徐々に徐々に目的地が近付き、ある交差点(枚方市か八幡市)で、俺は足を止めた。
ただの信号待ちである。

信号を見つめていた俺は、急に声をかけられる。
「あの~」
声の方に目をやると、歩道の隅におっさんが立っていた。
スーツを着て、髪を整えている。
おそらく50代後半で、細身。
「高校時代の数学の教師に、顔立ちが似てるな」と思った。
一見すると、それなりに社会的信用がある人のようにも見えなくはないが、俺は、とてつもない生理的嫌悪感に襲われる。
なんだろう?
内面から発する人間の醜悪さの結晶。
それをビンビン感じた。

それと、もうひとつ感じた。
いや、思い出した。
「俺は、このおっさんに会ったことがある」。
大学の5回生(俺は留年してる)の時、何かの用事で梅田に行き、その後、俺は家まで歩いて帰った。
確か、御堂筋(大阪のメインストリート)の淀屋橋か本町だったと思う。
辺りはオフィス街。
日曜で会社が休みだからか、人通りが少なかった。

ひとり、考え事をしながら信号が青になるのを待っていると、知らないおっさんが声をかけてきた。
「あの~」
声の方を見る。
スーツを着て、髪を整え、背はさほど高くなく細身。
「高校時代の数学教師に、顔立ちが似てるな」と思った。
「あの~、仕事で京都から来たのですが」とおっさんは語り始めた。
「財布を落としましてね、帰るのに困っていまして」と、俺の目を見たり、また、振り返って道路に視線を移しながら話し掛ける。
「知らんがな」、「挙動不審すぎるやろ」と思う俺。
「電車賃を、その~、貸してもらえないかと思いまして」とおっさん。
俺は、「交番に言ったらいいんちゃいますかね」と言い、信号が青になったことを確認して渡る。
本音を言うと、逃げ出したい気分だった。
世の中に、こんなレベルの人間がいることを初めて知り、気持ち悪かったのだ。
家に帰って、母親にその話をすると、「あんた、人が良さそうに見えたんやわぁ」と言われた。
※回想シーン終わり

そして、月日が経つ。
「まさか、あの時のおっさんか!?10年振りぐらいに、同じ寸借詐欺師の戯れ言を聞かなくてはいけないのか!?」と、身構える俺。
次におっさんが発した言葉は、「仕事でここまで来たのですが、財布を落としましてねぇ。四条大宮(京都)に帰れなくて困っていまして」。
もう、ええっちゅーねん。
このレベルの者と接するのは、もうええねん。
一生、いらんねん。
「自分は、今、自転車に乗ってトレーニング中なんで、ジュース代ぐらいしかお金持ってきてないですわ」。
信号が青になるのを確認し、俺はその場を立ち去った。

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