(673)雨の宝山寺とビニール傘

生駒にある宝山寺にお参りするようになって、5年ほど経つ(と思う)。
特定の宗教に属しているわけでもなければ、宗教に対して熱心でもない。
そんな俺がお参りを始めた切っ掛けは、友人の金持ちMさんに「あそこのお寺にお参りして、商売が好転してなぁ」と教えてもらったから。

ちなみに、縁日は1日と16日。
毎月、この日は時間を調整し、お参りするよう心掛けている。
まぁ、お参りを続けることで、タワーマンションに住み、自家用ジェットを所有するまでになっ…ていないが、ロードバイクに金と時間を費やすことで満たされた日々を送っている俺は、それなりに幸せ者なのだろう。

5月1日。
急いで仕事を終わらせ、時計に目をやると14時前。
「今から電車に乗ったら、宝山寺には15時頃着くなぁ」。
机の上を簡単に片付け、会社を出た。

駅に向かいながら、空を見上げる。
雨が降る気配はしない。
ただ、天気予報によると、1時間後の降水確率は50%。
「まぁ、大丈夫やろ」。
「降っても大したことないわ」。
特に根拠など無いが、自分にそう言い聞かせる。

「やっぱり、傘を持って来た方がよかったかな…」。
少し悩みながら電車に揺られる 。
会社を出る時、傘立てが目に入り、ハンドルに手を伸ばしそうになった。
しかし、「荷物になるわ。いらんやろ」と判断。
後になって思うと、俺は浅はかだった。

15時過ぎ、お参りを終え、生駒ケーブルの宝山寺駅へと向かう。
長い石段の参道を降りていると、ポツポツ…ポツポツ…。
「うっわぁ。雨、降ってきたわぁ」。
「まぁ、小雨や。大したことない」。
「こんなもん、すぐ止むよ」。
最初はその程度に考えていたが、急に雨脚が強くなり、「大したこと…あるわ!」。
フードを被り、早足で駅へ急いだ。

自動でも無ければ人もいない改札を駆け抜けると、バタバタバタバタ…。
駅舎の屋根に激しく打ちつける雨。
「雨、大したこと…ありすぎたやんけ…」。
びしょ濡れにはならなかったが、俺の服はそれなりに濡れている。
と、ピカッ。
「雷かよ…」。
ゴロゴロゴロゴロ…。
「傘、持ってくるべきやったわ」。
「ここまでの展開は想定してへんかった…」。

ケーブルカーに乗り込み、出発を待つ。
と、車内の照明が消えた。
「何や?薄暗くなったなぁ」。
辺りを見回す。
「あの~、すみません」。
職員がドアから顔を出した。
「落雷のため、車内を消灯します」。
雷と消灯がどう繋がるか知らないが、「まぁ、そういうもんなんやろ」。
何となく受け入れる俺。

宝山寺駅から鳥居前に向けて、ケーブルカーは走り出した。
そして、悩む。
車内でひとり考える。
「ビニール傘を買うべきか…?」。
この日と同様、甘い見込みで外出し雨が降り、傘を買った。
そんな経験が何度もある。
俺はひとり暮らしなのに、家にはビニール傘が4本。
「また1本、コレクションが増えるのか…」。

ビニール傘1本が500円ぐらいとして、俺はまた無駄な出費…となる。
心情としては、10円でも嫌だ。
しかし、家の最寄り駅から家までは5、6分歩く。
傘が無いと困る。
「う~ん。コレクション、増やすしかないな…」。

ケーブルカーが鳥居前駅に着いた。
鳥居前から近鉄の生駒駅は、すぐそこ。
目の前にある。
が、先に傘を買っておこう。
激しい雨に打たれ、生駒駅とは逆の方向へ走る。
セブンイレブンがあるのだ。

入店すると、入口付近に何本かのビニール傘が吊られていた。
その1本を手に取り、そしてレジへ…の前に考える。
無駄な出費に抵抗を感じてしまう。
仮に、ビニール傘の値段が1円でもだ。
ただ、濡れたくはない。

意を決してビニール傘をレジに持って行き、購入。
「5本目やな…」。
雨が降ることをわかっていながら、荷物になるという理由で傘を持たず外出し、そして傘を買って無駄な出費。
「今回で何回目や?」と、自分を責める俺。
溜め息を付いて店を出ると、雨は上がっていた…。

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