(143)ロードバイクと彼女がいた、過ぎ去った日々。-1

「あなたは女性にもてますか?」と聞かれたら、迷わず俺は答える。
「もてません」。
昨日今日始まったことではないが、俺はデリカシーの無い男で、しかも、もてる努力をあまりしない。
「努力をしなくてももてる」ではなく、「もてないくせに、努力もしない」である。

そんなこんなで、40過ぎても独身の俺だが、人生の中で、女性に評価してもらえた経験もある。
数年前にもあった。
「世の中には、物好きな人がいるもんですなぁ」と思う。
今はどこで何をしているか知らないが、付き合った女性。

付き合い始めた彼女に、最初に言われたのが、「今の女関係を洗いざらい言って」。
女性特有なのか、彼女の性質なのかはわからないが、妙な猜疑心があるなと感じつつも、「あなたが思ってるほど、俺、女にもてへんよ」と答えた。
なにも、謙遜しているわけではない。
実際、当時の俺は、ロードバイクを買って間もなくの頃で、暇さえあれば走り、それだけで満たされた日々を送っていた。
俺は、変わった男なのかも知れないが、「女にもてたい」よりも趣味の方が優先順位が高くなる時期があるのだ。
今でも、同窓会の様な集まりで、同級生の元女子に「あの時、誰が好きやったん?」と聞かれると、正直言って、困る。
「そんなん、いません…。あの時、X6800が家にあり、最高の環境で『信長の野望』をプレイし、それに夢中でした…。ファミコンでは、ドラクエⅣもありましたね…」と、当時の記憶、感情を思い出すと、そうなってしまうのだ。

「デートしよう」ということで、付き合い始めて最初に誘ったのが、神戸の王子公園にあるピザ屋。
彼女は、家も職場も神戸なので、「相手にとって都合がいいだろう」と気を使いつつも、「ただ俺がピザを食いたいだけ」という気持ちもあった。

当日のスケジュールを検討する。
平日の夕方、三宮で待ち合わせ、阪急王子公園駅で下車。
駅からピザ屋までの道順は、地図を確認することでなんとなくわかったが、駅からの距離、時間も含めて、正確に把握したい。
「よし、サイクリングがてら、現地調査に行こう」と、俺は神戸に向けて走り出した。
ちなみに、デートの下調べなど、付き合い始めたこの時1回きりである。

国道2号線を西に進み、神戸市に入った辺りで北に向かう。
「神戸らしいなぁ」、「阪急沿線って感じやなぁ」と感じながら、小奇麗なお店や住宅街を貫く、長い坂道を走った。
ブラケットを握り、サドルには座らず、立ち上がってゆっくりとペダルに体重をかける。
額に少し汗が浮かぶ。
その時、何気なく思い浮かべた。
「この先、彼女と2人で満たされた時間を送れたらいいな」。
不思議と、大嫌いな登りが、初めて楽しく感じられた。

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