(145)ロードバイクと彼女がいた、過ぎ去った日々。-3

「自分を理解してほしい」との願いが込められた、彼女から送られてくる料理の写真。
まぁ、願いが込められているのかどうかは、俺の想像でしかないが、お返しに俺もメールに添付して送ろう。
「自分を理解してほしい」との願いを込めて、ロードバイクの写真を。

俺はこのブログでアホなことばかり書いているが、基本、自分が出せないタイプだと思っている。
しかし、彼女に対しては、自分を出そう。
さらけ出そう。
自分を理解してもらえるように、努力しよう。
それこそが、俺なりの誠実さ。

ロードバイクに乗り始めてから、しばらくして付き合ったその彼女とは、週に1回ペースで会い、毎晩、LINEやらメールで世間話をしていた。
ある土曜日、彼女は仕事で俺は休み。
「暇さえあればロングライド」という習慣があった当時の俺は、「とりあえず、姫路にでも向かおうか」と、朝からサドルに腰掛けた。

俺の住む西宮市から、姫路市までは、片道で80㎞無いぐらい。
昼過ぎには到着したが、体力にも時間にも余裕が有り余っている。
「このまま家に帰ったところで、どうせ暇やしなぁ」と思い、もう少し遠くまで走ることにした。

姫路を西にしばらく進むと、揖保川が見える。
川幅が広く、綺麗な川で、自然の豊かさや田舎ののどかさを感じた。
「いいねぇ。ここまで来る機会もそんなにないし、せっかくなので、川沿いを走ろう」。
頼りないガードレールが設置された川沿いの道路を、俺はのんびりと北に進んだ。

風が心地良い。
山や田畑、小さな家。
田舎の景色を見て和む。
しばらく、人にも車にもすれ違っていない気がする。
やがて、古臭くて味がある小さな橋のたもとに出た。

「向こう岸も走ってみようか」と、橋を渡ろうしたが、橋の真ん中で足をとめる。
休憩も兼ねて、のんびりと景色を眺めたいと思った。
俺は、欄干にロードバイクを立て掛けて、川の流れを見る。

橋の真ん中で、欄干に手を添え、悠長に川の流れを見る俺。
10分経ったか20分経ったかわからないが、「そろそろ行こうか。いつまでもこんな所で突っ立ってると、自殺志願者と思われるわ」。
そう判断し、ロードに乗ろうとした時、ふいに「ここだ」と思った。
フレームカラーがマゼンダの俺のロード、Anchorは、自然の中でもその個性を発揮している。
ポケットからスマートフォンを出し、気合を入れてシャッターボタンを押した。

「自分を理解してほしい」と願いを込めて、彼女に送ろう。
そうだ、写真だけ送り付けられても、彼女としては困るかも知れない。
俺は、写真に「俺は今、揖保川にいる」とかなんとかコメントを添えて、メールを送った。

その日の晩、返事は来なかった。
次の日の朝も返事は来なかった。
昼も夜も、返事は来なかった。

俺がロードの写真を送ってから、3日経って彼女からメールが来た。
「来週、水曜日の夜、元町まで来れるー?」みたいな内容だったと思う。
なるほど。
ロードの写真は、完璧にスルーされたようだ。

「あなたは女性にもてますか?」と聞かれたら、俺は迷わずに答える。
「もてません」と。

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