(971)ロードバイクには乗らず、友ヶ島を歩く~色気が無い~

防波堤の上。
視界いっぱいに広がる海。
日差しをさえぎるものなど無い。
「あってほしいわ…」
「暑いわ…」
「頭、痛なってきたし、喉も渇いたし」

「ちょっと…」
Nさん(50代 男性)に話し掛けると、小さなエビを針に付けながら、彼は振り返った。
「あの、俺、水のペットボトル、車に忘れてきたんですわ。取りに戻ります」
「はい」

駐車場へと歩く。
途中、左手にテトラポッドの列。
その向こうには、砂浜。
海水浴場だ。
「あぁ、多分、あそこやったなぁ」

高2の夏、級友よりキャンプに誘われ、加太を訪れた。
男3人、まったく色気の無い1泊2日。
海岸にテントを張り、焼肉を食い、調子に乗って缶ビールを飲んで、「そろそろ寝よかぁ」。
眠りにつこうとした…が、眠れない。
うるさすぎて眠れない。

辺りには、7~8組の大学生集団がキャンプを楽しんでおり、深夜までどんちゃん騒ぎ。
「寝かせてくれよ…」
「お前らも、早く寝ろよ…」
酒が無くなれば、周辺の店に調達しに行くのだろう。
「ウィーーン」
「フォン、フォン、フォーーン」
バイクや車の音が、かなり鬱陶しく感じられた(飲酒運転に寛容な時代のことです)。

また、キャッキャッキャッと、酔っ払って楽しんでいる女の声も、耳に、頭に、胸に響く。
「くっそ…」
高2の俺は、大学生との格の違いを思い知り、「大学に入ったら、女連れでキャンプしたる…。ここ、加太で…」。
そう、誓った。

大学3回生の夏。
確か、昼前だったと思う。
バイトを終えて、家に帰る途中、携帯に着信が入った。
中学からの友人だった。
「おぅ、何や?」
「おぅ、今日は暇か?」
「さっき、バイト終わったところやから、何も予定無いで」
「そうか。じゃあ、ドライブせえへんか?」
大阪市内を走り、南の方をうろうろと進み、和歌山に入る。
もう、辺りは薄暗い。

「よう見えへんけど、海か?海沿いを走ってんのか?」
「おぅ、そうやな」
「ここ、どこら辺やねん?」
「加太や」
「加太かぁ」

しばらく進むと、車を止めて、「そこの便所に行ってくるわぁ」。
友人が車から降りた。
俺も車を降りて、薄暗い景色をぼんやりと眺める。
「あぁ、あそこやったなぁ」
「あそこでキャンプしたんやわ」
「あぁ、男ふたりでドライブかぁ。今回も、色気が無いよなぁ」

それから20年と少し経って、俺はまた訪れた。
加太に訪れた。
釣りをするおっさん2人と訪れた。
「う~ん、恐ろしく色気が無いよなぁ」

駐車場。
車に忘れた水のペットボトルを手に、釣りをするおっさん2人の元へ戻る。
と、道の脇に猫。
気持ち良さそうに寝ている。
スマートフォンを構え、「寝顔を撮ったろ」と試みたが、猫はどこかへ逃げて行った。

つづく

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