(975)ロードバイクには乗らず、友ヶ島を歩く~ひとり旅の女性~

9時20分を少し過ぎ、フェリーは友ヶ島の野奈浦桟橋に着岸。
約30人の乗客は、席を立ってぞろぞろと下船する。
「さぁ、行こかぁ」
俺は、彼らの後に付いて、ゆっくりとフェリーを降りた。

桟橋を渡ると、「らぴゅカフェ」。
友ヶ島は無人島だが、一応、観光地なのでカフェと宿がある。
「とりあえず、ビールでも飲んで行こかぁ」
店頭に置かれたメニューに目を通す。
「うん、びっくりするほどの観光地価格でもないな」
「でもなぁ…」
理性を取り戻す俺。
「今から歩きまくって、汗も掻きまくるよなぁ」
「汗を掻いた後のビールはええけど、掻く前に飲むんは良くないよなぁ」
「酔っ払って、注意散漫になって、山道を登るんも怖いし」
「やめとこか」

何も買わず、近くのベンチに腰を下ろそう…としたその時、「うっわ!何や!」。
ベンチの後ろに立つ、大きな木。
その幹を、黒い影が絡み付くように登っていった。
「何や!?」
足を止めて、様子を伺う。
「あ、また動いた!」
「あれはリスや!間違い無く、リスやわ!」
野生のリスを初めて見たため、少々興奮する俺。

ペットボトルの水をちびちびと飲み、ベンチでぼんやり、無駄に時間を過ごす。
「島に着いて、すぐに観光…じゃなく、敢えて観光しない。敢えて、ぼんやり。そういうスケジュールやねん」
うなだれ、脳内でもうひとり自分に語り掛ける。
と、すぐ近くに人影。

頭を上げる。
「誰…?」
目の前には、眼鏡を掛けた30前後の女性。
その距離、1mと45㎝。
俺に何か話でもあるのか?
「先輩…。私は先輩のことをずっと見てました。とてもふしだらな目で…。それで、今日、卒業式の今日、どうしても気持ちを伝えたくて…」
一瞬、彼女の口から、その言葉がこぼれる…ことを予想したが、ありえない。
お互いに初対面だ。
設定もよく分からない。

まぁ、いい。
とにかく、俺に近寄った理由は何か?
考える。
分からない。
見たところ、彼女はひとり。
ひとり旅の女性。
「ひとり旅してる姉ちゃんやなぁ」としか思わない。

と、彼女は無言でスマートフォンを構えた。
「え、俺を撮るんか?いきなり、どういう展開やねん?」
そして、視線とスマホを斜めに上げ、パシャパシャと写真を撮り始める。
「あ、そういうことか」
「俺には用が無いんか」
「用があるんは、そっちね」
「リスね」

つづく

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