(988)ロードバイクには乗らず、友ヶ島を歩く~俺の蕎麦屋~

第2砲台跡を見て回った後、次に目指すは第3砲台跡。
「石が転がる山道、また歩かなあかんのか…」
うんざりしつつ来た道を戻る。
「あぁ、暑い…」
「だるい…」
顔からは汗が流れ出し、拭いても拭いても止まらない。
また、Tシャツはびちょびちょ。
物凄い不快感。
「サイクリングジャージ、着て来たらよかったわ…」

セミやハチはよく見掛けるが、人影は無い。
「そら、そうやなぁ。ここは都会から離れた無人島やもんな」
独り言をつぶやき、だらだら歩いていると、「あっ」。
ふと思い出した。
中学の時に、旅番組だったかグルメ番組で観た店を。

車道も通っていない山の奥に、その店はあった。
店構えは、鬼太郎の家の上半分(居住スペース)みたいな感じ。
中は、カウンター席が2つか3つ。
かなり狭い。
「こんな辺鄙なところで、こんな店で、商売やっていけんのか?」
不思議に思いつつテレビを見詰めていると、どうやら、店主は銭金で仕事をしていない様子。
山深い場所にある小さな店へ、わざわざ来てくれるお客様。
彼らに最高のおもてなしをしたい。
それが仕事をする理由…のようだった。

「なるほどな。そういう考え方があるんやな」
感心すると同時に、「いつか、俺もやってみたいな」と思った。
不親切この上無い山奥に立つ店。
とても小さな店だが、俺の城だ。
遠方から来られたお客様に、俺が料理を振る舞い、喜んで帰ってもらう。
「いいねぇ」
細やかなロマンを感じる。

立ち止まり、タオルで顔を拭きながら、「ええ場所、あれへんかな?」。
辺りを見回す。
道の脇に、小さな店をひとつ構えられる程度のスペースがほしい。
徹底的に、限界まで省スペースを心掛ければ、どうにかならないだろうか?
考える。
と、アイデアが浮かんだ。

「あっ!立ち食い蕎麦屋、ええんちゃうか?」
「お客に立ってもらうだけで省スペースや」
「メニューを絞れば、厨房も狭くできるしな」
「OK!工事現場の仮設トイレみたいな店にしよう!」
ロマンが現実にほんの少し近付いた…気がして、胸が熱くなった。

店の名前は、「蕎麦処 大貴族」。
見た目は仮設トイレでも…だ。
客は、店名だけで上品な蕎麦を食わせてくれると思うだろう。
まさに、こちらの思惑通り。
しかし、「少しパンチが弱いかな?」とも思う。
「大貴族」は少し弱い。
なら、「スーパー大貴族」はどうか?
かなりやってくれそうな雰囲気を醸し出している。
ただ、「『スーパー大戦略』みたいやな…」。
となれば、思い切って無駄を省くしかない。
店名は、ストレートに「貴族」でどうか?
ダメだ。
自分で提案しておいて何だが、「貴族?は?」だ。
悩む。
何かが違う。
その後、足し算と引き算を繰り返し、「手打ち蕎麦 待っててコイサンマン庵」に決定した。

ちなみに、「手打ち蕎麦」を謳っているが、そんな面倒なものは出さない。
数年前の大晦日、スーパーで見掛けた「1玉5円」の乾麺を使う。
「大量に買うから!」とスーパーなりメーカーと交渉し、「1玉3円」辺りで仕入れたい。
「原価率1%未満」を実現したいと思う。

メニューは、「ざるそば」のみ。
天ぷらを揚げるスペースを省きたいし、そもそも俺には技術が無い。
あと、面倒。
よって、ざる一本で勝負する。
現時点での課題は、蕎麦つゆ。
激安の蕎麦つゆを、どこで仕入れるかだ。

値段はどうしようか?
蕎麦も蕎麦つゆもスーパー…だが、観光地価格で1,000円ぐらいか。
いや、それは具合が悪い。
客に、「まずい上に高い蕎麦」と思われてしまう(その通りなんですけどね)。
となれば…だ。
逆に、2,500円はどうか?
高けりゃ美味く感じる奴も、世の中にはいる。
そういう人種をターゲットにするのが、賢明なのかも知れない。

「あぁ…」
まぶたを閉じれば、キレまくる客の顔が浮かぶ。
「おい!この蕎麦、何やねん!?」
そこで、俺は威勢よく言い返すのだ。
「黙って食え!アホンダラ!」
「気に入らんかったら、財布置いて帰れ!クソボケ!」
ただ、客がいかつい男の場合は腰を低く。
徹底的に腰を低く。
……
……
……

ペットボトルの水を口に含み、「アホくさ」。
くだらないことを考えている場合では無い。
第3砲台跡に向かって、俺はまた歩き始めた。

続く

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