(23)伽羅橋交差点で思い出す。初めてプロレス観戦をした日。-2

教室の掃除を終え、急いで家に帰り、坊主頭のだっさい中学生である俺は、だっさい服に着替え、駅に向かった。
地下鉄で難波駅まで出て、南海電車に乗り換え、羽衣駅へ。
電車が羽衣駅に入線し、さらに、聞いたこともない支線(盲腸線と言うの?)に乗り換えた。

電車の中は男だらけ。
いかにも、「俺たちみんな、プロレスに行きます」という感じで、妙な熱気に包まれている。
ひとり、吊り革にぶら下がった俺は、目の前の大学生っぽい二人組の話に聞き入った。
昔、臨海で、その兄ちゃんのひとりが、まだ若手の頃の前田日明選手の試合を観たそうだ。
10分1本勝負とかの前座試合。
前田は押しまくっていた。
相手選手はヘロヘロ。
時間切れになる少し前のタイミングで、前田がフォールしていたら、間違いなく3カウント取れていた。
確実に前田の勝利だった。
ところが、そこで前田は関節技をかけて、決まりきる前に時間切れになった。
「あの時、前田がフォールしてたら勝ってたのに」と化石のようなプロレストークをする兄ちゃんを目の当たりにして、「俺も今からプロレス観戦をする」と実感がわいた。

駅名標識「伽羅橋」を見て、電車は高師浜駅に着いた。
駅を出てから、「はっ!」と思った。
そこから臨海スポーツセンターまでの道がわからない。
とりあえず、人の流れに従った。
「どうせ、この人波のほとんどは、プロレスの客だろう」。

プロレス興行の会場。
それらしき建物が見えてきた。
チケット売り場もすぐわかった。
興行というものや、プロレス人気がどういうものか理解していなかった当時の俺は、前売り券を買っていなかった。
当時不人気のプロ野球、パ・リーグの試合を観に行く感覚であった。
運よく、売れ残っていた5000円のチケットを買う。
チケットぴあとかで買うような、必要な情報のみ印刷されたチケットではなく、選手の写真が載っているチケット。
今でも実家に残していると思う。

会場に入ると、グッズ売り場にパンフレットが何種類かあり、今大会のパンフレット、前回の東京ドーム大会のパンフレットと猪木対アリ戦のパンフレット(俺はこの試合を観ていない)を買った。
売り場に客が多く、ゆっくり物色できる状況ではなかった。
「面倒やからなんでも買ってまえ」と投げやりになり、感情移入しにくいパンフレットまで買ってしまったというわけだ。
猪木対アリなんて、俺が生まれた年の試合ですよ。

チケットを見ながら、自分の座席を探す。
1階席の1番後ろだ。
俺の席の後ろは通路。
リングまで遠い。
だが、思い出に残る経験をする。
当時、欠場中だった藤波辰爾選手が俺の後ろの通路を通ったのだ。
テレビで観ていた人と同じ空間の空気を吸い、手が届く距離にいる。
赤いジャージのパンツと、青いジャンパーだったと思うが、服を着ていてもドラゴン藤波の肉体から、そのオーラを感じた。
ちょっぴり感動。

会場全体の照明は消され、リング上にのみライトがあたる。
間もなくゴングが鳴る。

※この記事は、2019年1月27日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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