(212)俺は誓う。人に「ロードを趣味にしろ」と押し付けない。

俺は、ゴルフをしない。
興味が無い。
俺は、ロードバイクに乗って走るのが好きで、自分の自由な時間を、自分の好きなことに費やすと決めている。
俺の自由な時間の中で、ゴルフが入り込む余地は無い(プロレス観戦はある)。

正直言うと、サイクリングが趣味になると、かったるいことも多い。
例えば、クソ暑い日。
まず走り出す前、家でサイクルジャージに着替え、ビンディングシューズのダイヤルを回してる時点で、既に汗だくになる(うちのエアコンは5年ほど故障中)。
走っている最中は風を感じるが、信号待ちをしている時に、汗が流れ出る。
フレームのトップチューブに、顔からこぼれ落ちた汗がしたたることも何度か経験した。
また、走り終わってからも、脚に疲労感が残り、「動くん嫌」と思うこともある。
走っていて、わずかな段差でスリップし、怪我を負うこともある。
さらに、ロングライド中、立ち寄ったコンビニで買い物をする際、ボラドールJr.の財布を、人前でさらけ出さなくてはいけない。
悲惨である。

だが、俺はクランクを回し続ける。
自分の空いた時間にひとりで自由に走れる。
自分中心に、自分の都合で、趣味と向き合えるのだ。
結果、苦しみより達成感の方がはるかに大きい。
辛い思いをしても、日が経つごとに良い思い出に変わる。

自分の自由な時間に、自分の好きなことをする。
それは、人間として至って素直な姿であると考えている。
が、しかし、最近、鬱陶しいのが、ゴルフの誘い。
「お前、ゴルフしてる?」と聞かれることが多い。
また、「今度、一緒にコース回ろうぜ」と、俺がゴルフをしているのが前提で、いや、「ゴルフをしているのが社会通念」というノリで、接してくる奴が増えた。
40を過ぎたからだろうか。
本当に、どいつもこいつもゴルフに目覚め、俺を誘ってきやがる。
勘弁してくれ。

人生の中で、最初にゴルフを勧めてきたのは、父親だ。
「若いうちから、やっといた方がええぞ」みたいなことを、何度か言われた気がする。
もともと、父親はダットサンに乗って家と会社を行き来する男だった。
ところが、時代はバブルに突入。
羽振りが良くなり、ベンツに乗る。
海外旅行もよくしていた。
俺の記憶では、バブルの少し前から、子供ながらに、「生活水準が高くなってきたな」と感じていたが、それは父親を見て感じていたのかも知れない。
父親が次に手を出したのは、ゴルフ。
それまで、日曜は、競輪、競馬、パチンコぐらいしかすることがなかった父親が、ゴルフ?
朝のはよから、でかいバッグを肩に提げ、家を出る父親の背中を見るたびに、「接待ゴルフか。仕事の付き合いって、大変なんやなぁ」と思ったものだ。
が、様子を見ていると、どうも、ゴルフにどはまりしているようだった。
それからだ。
俺にゴルフを勧めだしたのは。
ちなみに、当時の俺は、メガドライブ(セガのゲーム機)で、「尾崎直道のなんちゃらかんちゃら」(タイトル、忘れた)を友人に借り、けっこう楽しくプレーしていたが、実際に自分がゴルフをしたいとは思わなかった。

社会人になってからゴルフを勧められたことは、何人かの上司から数回あったが、「強要された」と感じるレベルではなかった。
世間話の中で、話題がゴルフになった際、さらっと言われた程度だ。
ただ、別の会社で、サッカーチームに入れられそうになったことはある。
定例会議の場で、上司がこう告げた。
「社内でサッカーチームを作る。ユニフォームも作る」。
「勝手にやっといてくれ。俺には関係無いわ」と思っていると、「チームへの参加は強制じゃない。ただ、『入っておいた方がええよ』とは、先に言うとく」。
「それ、ほぼ強制みたいなもんやんけ!?」と思い、焦る俺。
「練習は来月から。場所は押さえとく。時間は、仕事終わってから、各自集合」。
「冗談やろ?」。
その会社では、俺に限らず、ほとんどの社員が朝9時出社。
定時は21時で、なんやかんやと残業をして、終電で帰るパターンが多かった。
給料は良かったが、金銭面ではなく、時間的に生活が苦しくなる環境。
今、思い返すと、15人ほどの社員1人1人は、本当にいい人ばかりだった。
が、しかし、社風に問題があった。
「みんな一緒に大いに働き、みんな一緒に大いに遊ぼう」という社風。
仕事の拘束時間が長い上、さらに、やりたくもないサッカーで拘束されなくてはいけない。
「15時間働いて、深夜にサッカーの練習をして、タクシーで家に帰って、翌朝は普通に出勤?無理…」。
「したくもないことを仕事として受け止め、向き合うことはできる。ただ、仕事以外の自由な時間に、したくもないことを強要されたくない…」。
定例会議が終わってから、俺は辞退する旨を上司に伝えた。
週に休みが1日しかなく、最低でも12時間以上バタバタしなくてはいけない会社。
忘年会の他、各種飲み会もある。
「こんな会社、行事なんか300年に1回でええねん」と思っていたが、「次はサッカー?その次は何?」と考えると、恐ろしくなった。
結局、その定例会議の2ヶ月後、俺は、サッカーどころか会社を辞めた。

今は、自分の時間を好きに使うことができるようになり、ロードに乗って、苦しんだり楽しんだりしている。
しかし、それを阻害するかのように、ゴルフに誘ってくる迷惑な野郎どもが、まわりに増えてきた。
一緒に酒を飲んでいると、必ずどこかでゴルフの話をねじ込んでくる。
「この前、コースを回ってなぁ」。
「俺は、昨日、打ちっぱなしに行ってなぁ」。
「実は、俺も最近、ゴルフ初めてん」。
みんな、ゴルフの話で盛り上がり、俺にとっては苦痛でしかない。
ひとり、無言。
興味が無さすぎて、会話に入ろうという前向きな姿勢にはなれない。
そこで、「お前は、ゴルフせえへんの?」とくる。
俺は、「せえへんよ。興味無いねん」と返し、会話終了…となればよいのだが、そうならないケースも多々ある。
「なんでせえへんねん?ゴルフ、おもろいで~。どうたらこうたら、どうたらこうたらで、お前もしろよ」と。
聞いてて、ムカムカしてくる。
本音をぶつけたくなる。
「俺はなぁ、自分の時間は他人に決めてもらうもんとは思わん。自分の好きなことをすると決めている。だから、ゴルフはせずに、ロードに乗る」。
「俺を『協調性が無い奴』と思うかも知れないが、自分の自由な時間を使って、他人にあわせて興味が無いことをするなんて、必要の無い協調性だ。そんなもんに付き合っても、自分を苦しめるだけだ」。
大声でこう叫びたくなり、ウズウズしてくる。
が、我慢。
飲み会をぶち壊してしまうからだ。

俺からすると、他人が休みの日にゴルフをしようが卓球をしようが、どうでもいい。
「どうぞ、どうぞ。好きなことを勝手にやっとけば」で終わる話だ。
なのに、何故、俺まで巻き込もうとするのだ…。
本当にゾッとする。
これからも、俺をゴルフに誘う刺客は現れるだろう。
俺は、イライラしながらも本音を包み隠し、やんわりと断るよう努力しなくてはいけない場面に、何度も出くわすだろう。
今後、新しい人間関係の中で、刺客がいつ現れるのか予測できないので、ゴルフに誘われること自体は諦めようと思う。
唯一、俺にできることは、他人にロードを強要しないこと。
「ロード、いいっすよ。どうたらこうたら、なんたらかんたらで、あなたも乗りましょうよ」と、聞かれてもいないのに、ロードに興味が無い他人にロードを強要しない。
そう、自分を律して生きていきます。
今から。

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