(242)OTTOLOCKのおかげで、重苦しさからは解放された。

「明日は、明石までひとっ走りしよか。チューブラーで、スカッと行こう」と思い、タイヤに空気を入れていると、空気が漏れる音がした。
持ち手を押したり引いたりするたびに、プシュー、プシューと。
「参ったなぁ。パンクしたんかな?」。
「いや、それはない。このタイヤは、交換してからそんなに走っていないはず」。
どこから音がするか検証したところ、どうも、バルブエクステンダー(バルブを延長する部品)のようだ。

「ほな、梅田に行って新しいのを買おうかぁ」と、俺はウエムラサイクルパーツに向かった。
目当てのバルブエクステンダーを手に取り、さっとレジで精算しようとする。
が、「ちょっと待てよ。ど忘れしているしているだけで、何か他に必要な物があるかも知れない」。
しばらく、俺は店内をうろつく。
大好きな特価品コーナーを物色したり、知らず知らずのうちに、買えるわけがないのに、高級フレームや高級ホイールを眺めたりして。
結局、「買い忘れてる物は無いわ。気のせいやったんや」と判断する。
そして、レジに向かうその途中、カラフルなベルトのような物が展示されている一角が目に入った。

「あ、これ、OTTOLOCKやん!」。
以前、ネットで「軽くてコンパクト!しかも最強のロックだ!OTTOLOCK!」のような印象を受ける記事を読んだ気がする。
確か、その時は、メーカーがクラウドファンディングによって資金調達をしていた頃で、「発売されたら買ってみよか」と思ったが、その後、失念。
俺は、色々と興味の対象が移るのだ。
数ヶ月後、「OTTOLOCKが発売されたが、品薄」という記事を目にする。
が、またしばらく失念。
その後、「OTTOLOCKを買いました!インプレします!」という記事を目にする機会があり、内容を確認した。
どうやら、発売前の煽りとは異なり、それほど評判が良い商品では無いようだった。

ウエムラサイクルパーツの売り場で、OTTOLOCKを手にする俺。
確かに、見た目はコンパクト。
ただ、持ってみると、見た目とは違い、少々ずっしり感がある。
「まぁ、それでも、普段使ってるGODZILLAロックより軽い上に、幅も取らへんな」と思いながら、俺は凝視し続けた。
この時点で、買う方向に心が動いていることを自覚する。

ネットには、OTTOLOCKを検証し、「数十秒や数分で切断した」とか、「U字ロックをメインにして、サブで使うならOK」という記事があったと思う。
要は、「実は結構頼りないよ」という結論に至る記事なのだが、「このコンパクトさと、許容できる重さは、アリやな」という気もする。
十分に。

俺はロードバイクに乗り出してから、これまで、GODZILLAをたすき掛けにするか、それをリュックに収納して走っていた。
もともと、こだわりがあって、GODZILLAを買ったというわけではない。
初めてロードを買った時、Y’sロード大阪の店員さんに、「何かいい鍵はありませんか?」と尋ねたところ、GODZILLAを勧められた。
買った動機は、それだけだ。
以後、たすき掛けにして走る際は、正直、「重い」とか「邪魔」と感じたが、赤いGODZILLAが妙に格好良くて、「ファッションとしてアリ」と俺なりに満たされる。
しかし、やはり不便すぎる面もあった。
旅に出る時は、いつも、GODZILLAをリュックに収納する。
と、幅を取りすぎて、他の荷物が入らないのだ。

「強度では劣るかも知れないが、快適さを求めて、OTTOLOCK、使ってみるか」。
レジに進む俺。
家に帰って、軽く説明書を読む。
たった3桁しかないダイヤルロック解除番号をセット。
形状の問題か、ダイヤル周りの操作に少しストレスを感じたが、とりあえずクリアした。
「では、実際に使ってみよう」と、ジャージに着替え、サイクリングの準備をする。
OTTOLOCKは、ジャージのバックポケットでも収納できるサイズだが、サコッシュに放り込んで走ってみた。

武庫川サイクリングロードを南下。
交通量も信号も少なく道幅の広い、工場を囲む車道に出る。
今までの重たさから解放され、俺は、気分良くクランクを回し続けた。
GODZILLAとは違い、幅を取らないこと、重たくないことが快適で、新鮮にも感じる。
「重さから解放されたわぁ」。
その喜びを感じながら、激しく脚を回す。
回せば回すほど、鼻炎のせいで、鼻からの呼吸が苦しくなったが、喜びが勝る。

1時間ほど走り、帰宅。
「ええ汗かいたわぁ」。
風呂に入りながら、快適なサイクリングの余韻に浸っていると、ふと思い出す。
「しまったー!」と声を上げそうになる。
予定では、サイクリングの帰りにコンビニに寄り、一度、OTTOLOCKを鍵として使ってみようと思っていた。
のだが、俺は真っ直ぐ帰ってきてしまった。
急いで帰ってきたところで、何の予定も無い、暇で虚しい人間のくせに。
ふっ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする