(249)サイクリング中、鼻炎に苦しむ。

去年の話。
慣れ親しんだサイクリングロードを走った時のこと。
往復25㎞ほどのサイクリングロード。
全然、大した距離ではない。
また、意識して高速で走ろうとしたわけでもない。
のに、息が上がってしまい、かなり苦しんだ。
「この程度の距離、運動量で、俺は何をもがいているのだろう?」と、自分でも不思議に感じる。

夜になり、布団の上でゴロゴロしながら焼酎をちびちび飲む。
いつもなら、自然と眠りに入り、気付けば朝なのだが、この日は違った。
呼吸が出来ず、あまりに苦しく、夜中に目覚める。
「寝てるだけなのに、俺は何をもがいているのだろう?」と、自分でも不思議に感じた。

翌日の夕方、近所の飲み屋に行くと、たまたま知人と会った。
ふたりで世間話をしながら飲み食いしていると、「おかしい…」。
自分の息が乱れていることに気付く。
話している時、食べている時、飲んでいる時、とにかく口を動かしている間、呼吸困難になるのだ。
「これが、花粉症というやつか?」。
「いや、目はかゆくないので、鼻の病気か?」。

鼻呼吸ができず、ロードに乗っている時はもちろん、普通に生活することすら困難な日々を過ごす俺。
当初、「ほっといたら、自然に治るやろ」程度に考えていたが、何も改善しなかった。
困った。
病院に行く度胸は、微塵も無い。
俺、病院、大嫌い。
「市販薬でなんとかならんやろか?」と、町の薬局に行き、店員さんに事情を説明したところ、鼻の穴にシュシュッとするスプレーの薬を勧めてもらった。
これが効果抜群で、安心して、睡眠も会話も飲食もロードに乗ることも可能になった。

ところが、「治ったなぁ」と余裕をかましていた、ある日の夜、また苦しむ。
呼吸困難。
息が出来ない怖さを、ダイレクトに感じた。
そこで、またスプレーの薬を使う。
しばらくはマシにはなるのだが、またしばらくすると再発。
Wさんというロードバイク乗り仲間と、ふたりで猪名川サイクリングロードに向けて走った時も、鼻の調子が悪く、走り出してすぐに呼吸困難。
公道で信号待ちをする度、肩で息をする俺。
Wさんは、「こいつ、体力無さすぎるやろ?」と思ったことだろう。

「参ったな…」。
もう一度、薬局に行った。
薬について知識が無い俺は、箱のデザインで判断し、より強力そうな物を選んだ。
薬のジャケ買いなんて、初めての経験だ。
使ってみると、これはこれで効果抜群。
サイクリングをしていて、または寝ていて、「今日はちょっと鼻の調子が悪いな」と感じる度に、ジャケ買いした薬に助けてもらった。

ただ、最近(ここ数ヶ月)になって事態は変わる。
常に鼻が詰まっている状態で、薬が効いている時間が随分と短くなった(と感じる)。
寝てる間は、鼻が死んでいるので、口で呼吸する習慣がついたが、そのため、喉がカラカラになり、目が覚める。
枕元に置いているペットボトルのお茶を口に含み、また寝るが、それを繰り返す夜もある。
困った。
良質な睡眠がとれない。
サイクリングしていても、口で呼吸するしかないので、すぐに喉が渇くし、良質な呼吸が出来ないと、良質なサイクリングも出来ない(←自分の言葉のように言っているが、どっかのサイトに書いていた気もする)。

地味に困るのが、人との会話。
普通に話しているつもりなのに、鼻声すぎて、「え、なんて?もう1回言って」と言われることが増えた。
たいしておもしろくもない話を、もう1回言わなくてはいけないことほど、辛いことはない。
また、「あぁ、俺は人とのコミュニケーションも満足にでけへんのか」と、自分に失望もする。

ついこの間も、一瞬、自己嫌悪に陥りそうになった。
家から少し離れた、個人経営の中華屋に行った時のことだ。
適当にカウンター席につき、メニューに目を通す。
「お、担々麺うまそうやな」。
担々麺の写真に魅了される俺。
「決めた」と思ったが、写真の下に、「黒胡麻担々麺」、「白胡麻担々麺」と記載されているではないか。
「どちらも捨てがたい…」。
3分ほど悩んだ結果、「黒胡麻担々麺」を選択する。
大学生ぐらいの店員の兄ちゃんに声を掛けると、「はい、何にしましょう?」。
「黒胡麻担々麺を下さい」。
「はい、白胡麻担々麺ですね」。
違う。
まぁ、鼻の調子が悪く、聞き取りにくい鼻声で話す俺が悪いのだ。
少し傷付いたが、気を取り直して、もう一度伝える。
「黒胡麻担々麺を下さい」。
今度は、聞き取りやすいように、俺なりに気を付けて話したつもりなのだが、「はい、白胡麻担々麺ですね」。
「!?」。
申し訳無い気分になる。
俺の声は、よほど聞き取りにくいのだろう。
「いえ、く・ろ・ご・ま・担々麺です」。
「え、白胡麻担々麺ですね」。
「いえ、く・ろ・ご・ま・です。く・ろ・ご・ま・担々麺です」。
「はい、白胡麻担々麺ですね」。
「『く』です。『く』・ろ・ご・ま・担々麺です」。
だんだん疲れてきた。
「あ、はい。黒胡麻担々麺ですね」。
「はい、そうです」。
やっと通じた。
何か、ひと仕事終えた心境になる。
10分ほどすると、「お待たせしました」と店員の兄ちゃん。
俺は、少しテンションが上がる。
お待ちかねの黒胡麻担々麺が来たのだ。
と思ったら、俺の目の前に置かれた物は、白胡麻担々麺ではないか…。
「お待たせしました。白胡麻担々麺です!」。
俺は、言葉が出ない。
「作り直しを要求しても、結局、無駄やろう。こいつ、アホなんやわ」。
そう自分を納得させ、大人しく白胡麻担々麺に手をつけた。

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