(267)ロードバイクに乗って、餃子を買いに行く。~大阪王 伊丹店~

家を出てすぐに、向かい風の強さにうんざりした。
前髪が風に流され目に入り、痛いし鬱陶しい。
その時、ふと気付いた。
「しまった。ヘルメット被るんと、アイウェア掛けるん忘れてた…」。
サイクリングに出る前、アンダーウェアを着て、ジャージを羽織って、グローブをして…と、ルーティンがある。
のだが、俺はぼんやりした人間なのか、走り出してから「しまった!」と思うことが、ちょくちょくある。
「まぁ、しゃあないわ。ヘルメット被ってないのはマナー違反な面もあるし、車道より歩道中心に走ろう」。
そう決めて、俺はクランクを回した。

目的地は伊丹市にある「大阪王(王将ではない)」という餃子専門店。
評判の良さは以前から知っていたが、なかなか行く機会も無く、今日に至る。
が、「仕事終わってから、今日も武庫川サイクリングロードを走ろうかぁ」と考えていると、「ちょっと待てよ」となった。
「武庫川サイクリングロードを途中まで走って、上(土手の上の車道)に上がったら、伊丹なんかすぐちゃうん?」。
Googleマップで確認すると、片道10㎞ちょい。
大阪王 伊丹店に対する気持ちが、かなり前向きになる。

食べログで「大阪王 伊丹店」を検索。
店内で食べると、ロードバイクの盗難が気になるため、焼き餃子のテイクアウトができるかどうか調べておきたい。
「お、あるわ!テイクアウトできる!」。
しかも、店の外から注文できる、テイクアウト用の窓口まである。
条件が完璧に揃った。
行くしかない。

国道2号線の脇から、武庫川サイクリングロードに降りる。
見慣れた景色を北に進みながら、土手の上の車道に上がるポイントを忘れないように心掛けた。
少し走るとJR神戸線の鉄道橋が見え、次に阪急、その次に新幹線。
その新幹線の手前にある甲武橋を渡って、伊丹に向かうのだ。
が、サイクリングロードから甲武橋に上がるには、信号も横断歩道も無い車道を渡らなくてはいけない。
そこそこの交通量で、そこそこ飛ばして走る車。
渡るのが怖いが、様子をうかがって突っ切った。

甲武橋を渡り、171号線を突き進む。
が、交通量が多いので、少しでも「こわっ!」と思えば歩道に逃げる。
途中から、ほぼ歩道を走ったが、下校中の中学生が歩道を占拠すると、かなり走りにくくなったので、脇道から別ルートを使い目的地を目指した。

「駅前に、繁華街に近付いてきたな」。
そう感じながら、脚を回す。
家を出てしばらくは、向かい風が気になったが、ここまで来て、道は狭いものの快適に走れるようになった。
阪急伊丹の駅周辺には、何年か前、知人に連れられラーメンを食いに来た。
営業の仕事をしている頃もたまに訪れたが、俺にとって、それほど縁がある感じがしない。
だが、久々に伊丹駅を見て、妙に懐かしく感じる。
その阪急伊丹駅から、目と鼻の先にある大阪王 伊丹店。

「あった」。
赤の店舗用テントが、食欲をそそる。
餃子専門店は、こうじゃないといけない。
ロードを押して、テイクアウトの窓口から「すみません」と店員さんに声を掛ける。
愛嬌のある顔立ちの若い兄ちゃんが、「はい、何人前にしましょ?」。
「2人前でお願いします」。
「焼き餃子ですか?生ですか?」。
「焼いてるのでお願いします」。
千円札を渡すと、お釣りと作り置きの焼き餃子が入った紙箱をさっと手渡してくれた。
「これやったら、ロードを止めておく必要も鍵もいらんなぁ」。
俺にとって、かなり都合がいい店である。

ハンドルを握る左手、手首にビニール袋をぶら下げ、家に向かって走る。
甲武橋を渡り、武庫川サイクリングロードに降りる際、また苦労したが、俺の心は、早く餃子を食いたい気持ちでいっぱいだ。

「さぁ、食うぞ」と、ビニール袋から紙箱を取り出す。
「もう、この時点でうまさが伝わってくるやんけ!」。
胸が期待で張り裂けそうだ。

紙箱を開けてみる。
帰りの道で、ちょっと激しく走ったので、「餃子、バラバラになってるんちゃうか?」と不安を感じたが、それほどでもなかった。
ほっとする俺。

ひとつ、口に含んでみる。
噛むと、まず、カリカリ。
カリカリしつつも、後からもっちり。
香ばしくもあり、食べ応えもある。
「これはうまい」。
文句無しにそう感じた。
餃子の王将や大阪王将など、たくさんの中華料理屋で食べる餃子にはそれぞれの魅力がある。
しかし、大阪王の餃子を食べて、「これは初めてやな」とひとりで思い、ひとりで納得した。

「いやぁ、値打ちあるわぁ」。
2人前を食って、十分満足した。
ただ、「もしかして、お店で食ったら、これ以上にうまいんかな?」と考えると、気になって気になって仕方がない。
「明日も行こかなぁ。明日は店内で食おうかなぁ」。
今、俺は真剣に検討している。

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