(182)宝山寺に行く(ロードバイクに乗ってではない)。

大阪と奈良の境となる生駒山の中腹に、宝山寺というお寺がある。
初めてお参りした時、お寺というよりも山城のように感じた壮大な境内。
そこに、聖天さんという商売繁盛の神様がいて、縁日である毎月1日と16日に、なるべくお参りするよう、俺は心掛けている。
「いつでも聖天さんに会えるように」。
そんな配慮だろう。
暗くなっても門が開いているので、お参りする側としては、すごく助かる。

大阪出身の俺にとって、生駒山といえば遊園地のイメージが強く、宝山寺の存在を知ったのは、4~5年前。
知り合いのおっちゃん、Mさんと酒を飲んでいる時に、「仕事で困ったら、生駒のお寺に行ったらいいよ」と言われたのが切っ掛けだ。

もう40年ほど前の話だろう。
Mさんは、サラリーマンを辞め、屋台でたこ焼きを売り、家族を養っていた。
その頃、同業者で気のいい兄さんがいて、Mさんにうまいたこ焼きの作り方を教えてくれたそうだ(今でも感謝しているらしい)。
そして、その兄さんが言うには、「宝山寺に行ったらええで。商売の神様がいるから。お参りしたらな、うち、売上が1万円上がったんや」とのこと。
それを聞いたMさんは、繰り返しお参りしたところ、屋台が繁盛してお店を持ち、家まで建てた(「粉もん御殿」と本人は呼んでいる)。
「ええこと聞いたなぁ」と、俺も宝山寺にお参りすることにした。
基本的に、「俺はひねくれた性格だ」と自分でも思うが、神仏に対しては従順な面がある。

休日は昼から、仕事をしている日は夕方から、1時間ほどかけて、宝山寺に向かう。
昨日、7月16日もだ。
近鉄生駒駅で電車を降り、少し歩けば、生駒ケーブルの鳥居前駅。
猫の顔を模した、おもちゃみたいなケーブルカーに乗り、俺は出発を待った。
窓から景色を眺めていると、先にある宝山寺駅までの急勾配が目に入り、自然と足がすくむ。
「事故ったらどうしよう…」などと、縁起でもないことを考えてしまう。
気を紛らわすため、スマートフォンでニュースをチェックすれば、「阪神連敗」の記事。
ろくでもない。

出発の時刻になった。
木々が青々と生い茂った中を、ケーブルカーは進んで行く。
住宅街が見え、次に、線路と平行して走る、急勾配の道路に目をやる。
「今度、お参りする時は、ロードバイクに乗って来ようかな」。
「この登りを、ロードで走ってみたい。挑戦してみたいなぁ」と思う。
俺は登りが大嫌いだったが、実は最近、それを克服したような気がしている。
特に根拠は無い。
なんとなくだ。
「さっきのカーブに気を付けよう。あの辺りの傾斜は緩そうなので、足を休めながらゆっくりと登ろう」などと、道路を観察しながら、頭の中でシミュレーションする。
約3分後。
「それにしても長い登りやな」。
約5分後、ケーブルカーは宝山寺駅に着いた。
「挑戦は無し。俺、こんなん登るん、絶対無理」。
現実と向き合った結果、出した答えだ。

宝山寺駅から石段を上る。
参道の脇には数件の旅館が建ち並び、レトロな温泉街の雰囲気も少し漂わせている(営業していない旅館もありそうだが)。
一礼して、えらく大きな一の鳥居をくぐり、また一礼して門をくぐり、水屋で手を清めてから聖天堂に進む。
そして、賽銭箱にお札を入れ、聖天さんにお願いをした。
「自分はトータルでダメな人間です。親にも心配をかけることが多いと思います」から始まり、2~3分、手を合わせて心の中を聖天さんに伝えた。

「近いうちに、何かいいことが訪れそうな予感」。
それをびんびん感じながら、一の鳥居をくぐり、また一礼して帰路に着いた。
ちなみに、帰ってから知ったが、この日も我が阪神タイガースは、中日にサヨナラ負けをくらい、5連敗となった…。

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