(184)サイクリング中に奮い立たせてくれる、俺の中の石井 智宏。-2

新日本プロレスのリングに上がる、石井 智宏選手。
身長170㎝と、プロレスラーの中では低い方だが、ムキムキ具合がえげつない。
まるで、岩。
髪型は丸坊主で、眼光が鋭く、極道がプロレスをしているようにしか見えない。
ファイトスタイルは、飛んだり跳ねたりという華やかなものではない。
技のバリエーションはあまり多くはないが、シンプルな技を、ガツンガツンとぶつけるタイプだ。

ロングライドに出て、暑さや疲れにさいなまれ、「電車に乗って帰りたい」と思っても、俺がクランクを回せる理由。
それは、俺の中で石井が甦るからだ(もちろん、石井は故人ではない)。

去年(2018)、6月9日。
大阪城ホールに俺はいた。
その日行われた、「ドミニオン」という新日本プロレスにおける上半期の大きな興行を観戦するために。
大会の中では、メインとなる、IWGPヘビー級選手権試合のオカダ カズチカ選手対ケニー オメガ選手が特に注目された。
無制限3本勝負。
結果、60分を越えるありえない試合となり、プロレスラーのタフさが印象に残った。
しかし、俺にとって、最も魂が揺さぶられたのは、石井の試合である。
石井はタッグマッチに出場。
相手には、鈴木 みのる選手がいる。
みのるは、高校時代にアマレスで成績を収め、プロレスラーになってからもリアルファイト経験。
エンターテイメント要素の強いスタイルで戦う試合でも、技術と凄みを見せられる男だ。
試合中盤、リング中央で、石井はみのると対峙する。
エルボー合戦が始まった。
ゴツンと鈍い音が聞こえそうな両者のエルボーの打ち合いを観ながら、俺は2階スタンド席で固唾を呑んだ。
どちらもエルボーを得意としている。
単なる繋ぎ技ではなく、気合いの入ったエルボー。
それを打って、打たれてを繰り返す。
みのるのエルボーが、石井に炸裂。
足がおぼつかなくなる石井。
脳が別の世界に飛んで行った様子。
だが、耐える。
ダウンはしない。
ファイティングポーズをとって、みのると向き合う。
俺には、このシーンがたまらない。
「もう、しんどい。ロードに乗るん嫌や」とくじけそうになる時、俺の中の石井も、ふらふらになりつつ、急にムクッとファイティングポーズをとってくれる。

去年、8月4日。
俺は、大阪府立体育会館にいた。
プロレスにおける、世界一過酷なリーグ戦(と思う)、「G1 CLIMAX」の大阪大会を観戦するために。
石井の相手は、ケニー。
IWGPヘビー級チャンピオン。
プロレスラーの格としてはケニーの方が上だが、俺は石井の勝利を信じた。
試合が始まると、ケニーは、動き続ける。
攻め続ける。
時おり、余裕の表情を浮かべて、また攻撃に移る。
連発でvトリガー(助走して、相手の顔面に自分の膝をぶちこむ)を連敗し、ケニーが完全に主導権を握っているかに見えた。
だが、この時点で、打たれ強く、粘りのある石井のペースにはまっていたのかも知れない。
ケニーは、ひたすら動き続ける。
石井は何度も受け続ける。
「もう、だめか…」。
それでも、耐え続ける。
ケニーの表情に余裕が無くなった。
「まだ戦えるのか…?信じられない」。
そんな、驚きの表情に変わった。
石井も反撃に移り、もう、どちらが勝つかわからない展開に、観客は熱くなる。
結果、垂直落下式ブレーンバスターで、石井が勝利をもぎとった。
この試合の後、メインイベントは内藤 哲也選手対飯伏 幸太。
両選手とも魅力の塊だが、試合内容は覚えていない。
石井がもたらしてくれた興奮の方が、圧倒的すぎて。

今年の「G1 CLIMAX」は、もう始まっている。
俺は今年の8月4日も、大阪府立体育会館に行く。
既にチケットは取った。
早く、石井の戦いを生で観たい。
俺の中に、石井の戦う姿を刻み込みたい。

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