(192)高知を走る~室戸岬~

左手に海、右手に山。
延々と同じ道を走っているような錯覚に陥る。
「まだ着かんか…?室戸岬…」。
心が折れそうになったその時、大きなお坊さんの像が見えた。
「室戸青年大師像」という(後で調べて知った)。
弘法大師が若い頃、ここで修行されたのだ(後で調べて知った)。
「そういや、うちの家、真言宗やったな。でも、葬式はいつも浄土真宗のお寺であげてる。なんでやろ?」などと考えていると、今度は中岡慎太郎像が現れた。
弘法大師に中岡慎太郎。
室戸岬は、オールスター揃い踏みである。

ここで、「やっと、室戸岬に着いたわぁ」と、俺の気持ちは和らいだ。
スピードを落とし、ゆっくり進みながら景色に目を向けると、辺りには観光客が1人もいないことに気付く。
平日の夕方だからなのか?
「まぁ、いいや」と、ベンチに腰掛け、ぼーっとする。
野良猫が寄ってきた。
何か食べ物を欲しがっているようなので、リュックのポケットをほじくりだしたところ、出てきたのはスニッカーズ。
「こんなもん、猫が食うか?」。
スニッカーズをまたポケットに収め、俺は猫に別れを告げた。
まったりしすぎて忘れそうになったが、ホテルに向けて急がねばならない。

海沿いの道、国道55号線を進む。
ここまで、自然の中を長い距離走ってきたが、ぽつぽつと町並みが見えてきた。
道幅が狭くなり、交通量も増える。
少し、身の危険を感じ、俺は歩道に退避する。
歩道に対し、斜めに段差を超えるとスリップする可能性がある。
なるべく直角に段差を超えつつ、歩道に入ったタイミングでハンドルを右に切る。
また、歩道上での暴走を避けるため、ブレーキをかけたところ、やや曲芸のような動きになった。
「イキるなよ!」。
誰かが俺を呼び止めるように言った。
声のする方向に目を移すと、見たこともないコンビニ(酒屋?)の前で、たむろする5~6人の中学生。
その中の太いのと目が合った。
「このクソ田舎もんが…」と怒りに打ち震えたが、「こんなもんの相手をしている場合じゃない。ホテルに急がないと」と自戒する俺。
それにしても、「イキる」という言葉を耳にしたのは、約20年ぶりのような気がする。

安芸市のホテルまで、あと30㎞、25㎞と、徐々に近づく。
それと比例して、空は暗くなってきた。
焦ってクランクを回し、55号線を道なりに進むと、トンネルに出くわす。
車が飛ばしまくっている道の左端を、びびりまくりながら走る俺。
生きた心地がしない。
退避所で足を止め、スマートフォンで現在地を確認。
出口までの距離を調べようとしたが、先がめちゃくちゃ長い。
仕方がない。
安全を心掛け、歩行者用の通路を走ろう。
ロードバイクを担ぎ、柵を乗り越え、通路に足を踏み入れる。
が、何かおかしい。
「この通路は、歩行者用じゃなくて、トンネルを管理する人が使う通路では…」。
「そもそも、このトンネルは、自転車で走ってはいけないのでは…」。
ロードを押して、とぼとぼと入り口に向かって歩いた。
またまた時間のロスである。
この時、疲れが一気に押し寄せた。

トンネルを出てから、来た道を少し戻り、迂回ルートを走る。
ちんたら、ちんたらと。
安芸市に入った頃には、午後7時になっていた。
ホテルを予約した際に伝えた、チェックインの予定時刻を4時間も過ぎているではないか…。
自分の計画性の無さが身に染みる。

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