(195)高知を走る~田野駅から北川村へ~

田野駅に着いた。
輪行バッグを担ぎ、ホームから階段を降りる。
1階の駐輪場で、輪行バッグを広げ、ホイールをフレームに戻し、走れる状態になった。
軽くクランクを回し、駅の外に出る。
振り返ると、大きな瓦屋根を持つ田野駅が見えた。
道の駅が併設されている。
「この辺りの名物を食べてみたいな」と思ったが、余裕をかましている場合ではない。
この日のスケジュールは、午後3時を目標に、徳島県小松島市の中田駅に着くこと。
電車での移動を軸に考えているが、電車が走っていない区間は、ロードバイクで移動しなくてはいけない。
電車の乗り継ぎがうまくいくか?
ロードで初めて走る区間を、何のトラブルも無く走破できるか?
ともに、見通しが立たない。
「しゃーない」。
道の駅が気になりながらも、「とにかく、先に進むことを優先する」と自分に言い聞かせ、俺は泣く泣く出発した。

駅から北東に向けて走る。
往路では、徳島から海岸沿いを走り、室戸岬を回ってここまで来たが、距離として考えると、明らかに遠回り。
この日の復路は、山道を走り、最短距離で徳島方面に出るのだ。
ルートについては確認済み。
田野駅から北川村、東洋町を経て、海側に出るサイクリングのイベントがあるらしく、そのルートがネットにアップされていたので、参考にさせてもらう。

ほぼ平坦路。
畑仕事に出るのか、数台の車とすれ違う。
交通量も少なく、緩やかすぎる傾斜を走っていると、快適すぎて、自然にクランクが回る。
「余裕すぎる。このペースやと、中田に早く着くな」と考えた。
この時点では。
川沿いの道に出ると、青々とした山が目に映る。
一部工事中の区間もあったが、ここから先は、俺がロードで走って見た景色の中で、特に綺麗で、最も印象に残っている(今のところ)。

治水工事をしているのか、作業服を着て作業しているおっちゃんや兄ちゃんを横目に、勤労意欲0で趣味に没頭する俺は、ひたすら前に進む。
が、「工事中なので迂回しろ」と、案内看板に指示され、遠回り。
「まぁ、その分、景色も見れてええやん」。
そう思えるほど、俺は気持ちに余裕があった。
この時点では。

迂回路から本来走る予定のルートに戻ると、ほんの少し坂が続く。
天気も良く、徐々に暑苦しさを感じ、また、昨日150㎞走ったせいか、足に気だるさも感じた。
辺りを見回すと、誰ひとり歩いていない。
よくよく考えてみると、北川村に入ってから、工事の作業員以外の人、村人が歩いているのを目にしていない。
ただのひとりも。
「これは都合がええわ」と思った。
ロード乗りの本音として、ロードをひいて坂を登るところは、人に見られたくないのだ。
「OK!まわりには、ひとっこひとりいない!」と、俺はロードを降り、ハンドルを軽く握り、歩いて坂を登った。

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