(197)高知を走る~甲浦駅~

甲浦駅に着いた。
小さな天守閣のようにも見える駅舎。
「一応、駅なので、利用客の迷惑にならないように」と思い、駅舎の裏に回り、輪行バッグを広げる。
ロードバイクの収納を終え、駅舎の正面から入ろうとすると、 入口の脇にあるベンチに座って、缶コーヒーを飲むおっちゃん。
「おそらく、このおっちゃんは、利用客ではなく、近所の人がくつろぎに来たんやわ」と思い、ほっこりする俺。
実際、おっちゃんは、この後の電車に乗っていなかったので、俺の予想は当たっていた。

駅舎の隣に、ホームへ上がる階段があった。
改札は無い。
「また、ワンマン列車かよ。俺、ルールに戸惑うねん」と思いながら、駅舎に入る。
そして、焦る。
券売機が無い。
「どないしたらええねん!?」と思ったが、売店におばちゃん2人が世間話をしているのを発見し、俺は売店に向かった。

ポッキーだかボンタンアメだか、並べられた商品を物色しながらも、おばちゃんたちの話が終わるのを待つ。
「お、きりが良いところや!」とタイミングを見計らって、おばちゃんに声を掛けた。
「切符は、どこで売ってるんですかね?」。
「ここで売ってるよ。どこまで?」。
「中田です」。
輪ゴムではめたような切符の束の中から、俺に1枚差し出してくれた。
料金を払う。
「途中で乗り換えなあかんのですよね?中田まで行くから」。
俺がいる甲浦駅は、阿佐海岸鉄道の終点だ。
中田に行くには、途中、海部駅でJRに乗り換えなくてはいけないはず。

おばちゃん2人は、こそこそと何か話し合っている。
そして、「うん、この切符で行けるよ」。
「乗り換えは、どうしたらいいんですかね?」。
俺は、乗り換える際、改札機をくぐらなくてはいけないのか、改札機無しで乗り換えることができるのか、事前に知りたかったのだ。
「うん、この切符で大丈夫」。
「回答になってないやんけ…」と思ったが、実際に乗ってみると、かなりシンプルだった。
電車が、海部駅に着くと、運転手に「JRに乗り換えます」と申告して降りる。
その後、向かいのホームに入線したJRの電車に乗る。
俺は、難しく考えすぎたようだ。

「釣りを終えて、中田駅には何時に来れそうですか?正確な時間がわかれば教えて下さい」。
Nさんにメールをすると、「中田に着くのは4時ぐらいです」と返事か来た。
「それは都合が良い。次の電車に乗ったら、乗り換えもスムーズに行けるわ」と、俺は小躍りしてから、駅舎の回りをうろうろした。
が、すぐに飽きた。

「電車に乗る前に、トイレに行っとこか」。
駅舎に戻ってトイレに入り、和式トイレ(大便器)の横を通りすぎようとした時、視界の端に黒いのが動いた。
「ゴキブリか。いや、ゴキブリにしては大きいよな」。
興味が湧いたので、そこに目を向けると、なんと、沢蟹。
大便器に沢蟹。
考えられない。

トイレから出て、階段を上がり、ホームでひたすらぼけっとする。
山と住宅街、田畑、ギラギラと俺に光を照らす太陽。
「のどかやなぁ」と思う。
「この辺りやったら、3月ぐらいからヒグラシが鳴いてるんちゃうかなぁ」と、どうでもいいことを考える。
帰ってからの予定、明日からの予定は考えないように心掛け、ぼけっとできる時間を満喫していると、電車が来た。

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