(312)ロードで行く和歌山旅行~会津屋のたこ焼きを食べながら~

大阪と和歌山を繋ぐ26号線。
信号に引っかかり続け、やさぐれそうになる。
走っても走っても、進んだ気がしない。
真面目にクランクを回す作業が、本気で無意味に感じられる。

「ほんまにだるいわぁ」。
ネガティブな気分になってきた。
それを払拭しようと、今の状況より過去に経験した悲惨なライドのことを思い出そう。
今より辛い経験を思い出すことで、「今の俺は恵まれてる」と自分を慰めたい。
ロードバイクに乗って辛い思いをしたことは、何度もある。
その引き出しを開けてみたところ、「夏のクソ暑い中、26号線を走ったこと」が1位に躍り出た。
「結局、26号線か」。
トップチューブに頭がつきそうなぐらいがっくりした。

我慢の連続。
血管がぶちギレそうな精神状態で走り続け、堺市から大阪市に入る。
朝、ホテルでしっかり食べたつもりだが、小腹が空いてきた。
「うちに着いてから食うもん、買って帰らなあかんなぁ」。
「日本亭の唐揚げ弁当食いたいけど、行きすぎてもうたなぁ」。
どうしたものかと考えたところ、「あるやんけ!このまま進んだら、前から気になってた店があるやんけ!」。

会津屋 本店。
大阪のたこ焼きの元祖と言われている会津屋。
西成区玉出。
26号線沿いにある。
以前も何度かお店の前を通り過ぎたが、まだ一度も食べたことがない。
「ええ機会や」。
お店の前でサドルから降りる。
店内で食べることもできるが、ロードを盗まれるのが怖いのでテイクアウト。
たまたまなのか、店先にお客さんがいなかったので、ロードを押しながら、道沿いに設置された鉄板の前に進む。
店員さんが俺に気付き、お店から出てきてくれた。
「いくつにしましょ?」。
メニューに目を通し、「12個で」。
ささっと対応してもらい、たこ焼きが入ったビニール袋を左手首にぶらさげ、俺は走り出す。

「たこ焼きぶらさげて走るんは、やっぱり邪魔やな」。
「うん、かなり邪魔やな」。
「公園かどこか広場に出たら、たこ焼きをリュックに入れよう」。
そう思いながら、ゴミゴミした景色の中、俺はクランクを回した。

難波辺りから、交通量も信号の数も極悪だ。
信号待ちをしていても暇なので、何気なく左手首にぶらさげたビニール袋に手を伸ばす。
小腹も空いたし、たこ焼きをひとつ食おう。
会津屋のたこ焼きは、ソースもマヨネーズも青のりもかかっていない。
手掴みでもOKなたこ焼きだ。
ビニール袋をまさぐり、箱の中もまさぐり、ひとつ掴む。
感触としては、「中で潰れたんかな?」。
そう感じるぐらい、小さなたこ焼き。
口に入れると、出汁の味が広がる。
「めちゃめちゃうまいやんけ!」。

信号待ちのたびに、小ぶりのたこ焼きをビニール袋からほじくりだし、口に含む。
「これはうまいわ」。
「ほんまにうまいわ。これはあかんわ」。
止まらなくなってきた。
走っていて、先の信号を見ると、「むしろ赤になってくれ。たこ焼き食いたいから」と思う。

四ツ橋筋を進み、2号線に出る。
そして、家がある西宮市に向かって走る。
信号待ちのたびにビニール袋に手をつっこむ。
淀川を渡る頃には、箱の中はカラになった。

庶民的でありながら、上品な味わい。
ミニシュークリームぐらいのサイズだが、出汁の旨味が染み込んだ会津屋のたこ焼き。
俺は大阪出身だが、今まで有り難がってたこ焼きを食ったことはなかった。
「うまい」とは感じるが、特別なうまさは感じない。
また、並んでまで食べる発想など無い。
が、会津屋のたこ焼きを食って、開眼しそうだ。
もう、和歌山旅行の記憶がふっとんでいく勢いだ。

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