(167)広島旅行1日目。呉の夜。ジンギスカンを食べながら、軽くビールを飲む。

1日目に宿泊するホテル、呉阪急ホテルの前までたどり着いたが、何もする気が起こらない。
疲れた。
「チェックインする前に、輪行バッグにロードバイクを収納しなくては」。
そう、頭ではわかっているのだが、壁に立て掛けたロードの横で、30分ほど、俺も立ち尽くした。

「まずいなぁ」。
スマートフォンの時計を見たら、午後7時半。
本来なら、同じホテルに宿泊するMさんの部屋に、「さぁ、飲みに行きましょか」と誘いに行く時間。
予定より2時間半も遅れている。
嫌々ながら、ロードをひっくり返し、ホイールを外して、輪行バッグに納めた。
「入れ方が悪かったかな。ハンドルが、思いっ切り輪行バッグから出てるけど、まぁええわ」。
ホテルのロビーでチェックインを済ませ、自分の部屋でシャワーを浴び、生き返る。

今回の同行者、Mさんの部屋に行き、大幅に遅れたことに対して、言い訳を交えながらも謝った。
そして、ふたり、「さぁ、呉の街に繰り出そう!」と、ホテルを出て、駅の北側に位置する繁華街を目指して歩く。
「もう8時やで。呉は、こんな時間に開いてる店、少ないで」と、テンションが下がるようなことをMさんは言うが、俺は、心の中で「そんなわけないやろ」と受け流した。

商店街に着いた。
確かに、開いてる店は少なかった。
隣の広方面からトンネルをくぐり、呉に出た時は、賑やかそうな街に見えたが、夜は活気が無い。
別の街に見えた。
店自体はあるが、感覚的に、その9/10は閉まっている。
とても寂しい雰囲気。
一杯飲むうにも、選択肢が少ない。
Mさんとの間に、「参ったなぁ」という空気が流れる。
適当に歩けば、理想的な店がどこかにあるのかも知れないが、「もう、歩くのは嫌。脚を使うのは嫌」。
心の底から、そう思った。

薄暗い商店街の中、頭を抱えた。
Mさんが口を開く。
「どっか、ええ店知らんの?行きたい店、無い?」と。
「いやいや、あなた、呉出身でしょ?あなたの方がよく知ってるでしょ?」と言いかけたが、Mさんが呉に住んでいたのは、昭和30年代後半まで。
「今の呉のことは、あんまりわからんわなぁ」と、納得すると同時に、ふと、行きたい店を思い出した。
呉に行く数日前、あらかじめ、呉のうまい店をチェックしておいたのだ。

「『関白』というお店に行きたいです」。
Mさんに伝えた。
「『呉に行ったらここに寄れ!』みたいな記事を読んだんですわ。ジンギスカンのひとり鍋が食えるそうで、それをつつきながらビールでも飲みましょう」。
スマートフォンのブラウザを起動し、関白さんの場所と現在地を確認したところ、歩いてすぐのようだ。

かなり年季の入った店内の様子を眺める。
60代だろうか?
マスターも年季が入っているようにうかがえた。
眼鏡をかけ、立派な体格のマスター。
「ジンギスカン鍋の牛バラ、お願いします」。
「ホルモン煮とカツカレー!」。
注文すると、ひとりでテキパキと作り始めるマスター。

「この店、流行ってるで。ほら、見て。冷蔵庫の数」と、飲食店を経営するMさんは、独自の視点でお店を評価していたが、俺はそれどころではない。
ジンギスカン鍋に、どはまりしていたのだ。
ひとり用のジンギスカン鍋。
特別、肉がうまいと感心したわけではないのだが、箸が止まらない。
野菜だ。
山盛りの野菜が、とてつもなくうまく感じた。
ひとり暮らしで、普段、あまり野菜を食べない俺には、量もあり、うまく野菜を食えるこの鍋は、有り難かった。
もっとたくさんの料理を、酒を飲みながら食べたかったが、お店は10時閉店。
我々の入店時間が遅かったので、あまりゆっくりできず、次の店を探す。

これまた、ネットで調べたのだが、「呉に屋台通りがある」ということで、向かってみた。
川沿いに6、7軒の屋台があった。
一通り、前を通ったが、俺が期待していた泥臭い屋台ではなく、若者向けな感じがしたので、ホテルに帰った。

そして、ベッドで仰向けになり、今日1日のことを思い出す。

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