(230)うだつの町並みに飛ぶスズメバチ-1

先に記述するが、俺はスズメバチが大嫌いだ。
まぁ、好きな人はなかなかいないと思うが、とにかく怖すぎる。
視界に入っただけで、「今すぐ、この場を離れなければ」と思う。
ロードバイクに乗って、自然豊かな土地に行くと、様々なわけのわからない虫を目にするが、スズメバチだけは、本当に洒落にならない。
死を覚悟しなければならない。

あれは確か、3年前。
知り合いのNさんが、鯛を釣りに徳島県の鳴門に行くということで、俺も付いて行った。
もちろん、車にロードを積んでもらって。
「鳴門に来たら、いつも高松まで往復ライドするけど、たまには他の方面に走ってみよう」。
そう思い、徳島県の観光地をネットで調べたところ、「うだつの町並み」に心を惹かれる。

うだつが上がる、古い建造物。
それらが、85軒も建ち並ぶ。
ちなみに、「うだつ」とは、1階の屋根から2階の屋根を支えているように見える、小さな壁。
隣の家が火事になった場合、防火壁の役割を果たし、さらに装飾の点でも価値がある(そうだ)。
これを設けるには、大層な費用がかかるらしく、うだつが上がる家は、裕福であることの証明とされた。
まぁ、ステータスシンボルと言ったところか。

「出世しない、ぱっとしない」という意味の表現、「うだつが上がらない」を地で行く俺としては、「是非とも、あやかりたいもんですな」と思う。
目的地が決まった。
次に、ルートの確認だ。
ネットで情報を収集。
会ったこともない、全然知らない人のブログに目を通すと、徳島駅から吉野川沿いの道を西に進み、うだつの町並みに向かうルートが記載されている。
「川沿いの道やと、景色もええやろし、走ってて気持ち良さそうやな」。
ルートも決まった。
まず、鳴門から徳島駅に出て、後は先ほど見たブログのルートに沿って走る。
片道50㎞ほど。
距離的にも時間的にも、問題無しだ。

何度も鳴門を訪れるうちに、Google Mapを確認せずとも、ロングライドの出発地点となる渡船乗場から鳴門駅、そして、鳴門駅から徳島駅まで走れるようになった。
そんな些細なことでも、自分の成長を感じられて、少し嬉しい。
俺は、気分良く、徳島駅に向かってクランクを回した。

鳴門から10㎞ほどかと思う。
自然豊かな吉野川を渡り、徳島市へ。
景色は一気に都市らしくなるが、街の真ん中に大きな踏切があるのは、少し違和感がある。
徳島駅に着いたのは、午前5時半ぐらい。
辺りはまだ少し暗かったが、眉山はよく見えた。
ここから先は、知らない人がブログで提示してくれたルートを頼って、うだつの町並みに向かう。
「まずは、この道やな」。
俺は、徳島駅の南側にある192号線を、西に向かって脚を回した。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする