(544)ロードバイクに乗って淡路島を走る~給食の配送Tとドジっ子OLのMちゃん~

「長らく海を見てへんよなぁ」。
淡路島を走っているにも関わらず、視界に広がる景色は田んぼと畑(たまに集落)。
走った印象を率直に言うと、飽きた。
最初はのんびりした田舎の景色を見て思うんですよ。
「ええよなぁ」と。
しかし、それが長々と続き、「さっきも同じところ走ったような…」。
「大丈夫か?俺の脳に異常があるのか…?」。
少し不安になった。

淡路サンセットラインは、以前にも走った道なのでルートを覚えているし、曲がる箇所も少ないためGoogleマップなど確認せずともすいすい進める。
しかし、それが安心感につながったのだろう。
また無性に眠くなり、歩道に上がってへたりこむ。

歩道の脇でぐったり。
回らない頭で、これからのスケジュールについて必死に考えた。
まず、16時になれば、釣りを終えたNさん(50代 男性)が待ち合わせ場所、淡路SAに車で迎えに来てくれる。
が、今のペースだと俺は淡路SAにかなり早く着いてしまい、待ち時間が長くなる。
ならば…と、Nさんの車に乗せてもらわず、このままロードバイクに乗って家まで帰ればよいのではないか。
距離は100㎞無いぐらい。
「何とかなりそうやな」。
自然にそう思ったが、「何ともならんやろ?」。
「死ぬほど眠たいのに100㎞も走られへんやろ?」と。
確かにそうだ。
「あぁ…お前の言う通りやわぁ」。
そう自分にささやき、しゃがんだ状態でまぶたを閉じる。

このまま眠ってしまいそうだ。
しかし、眠るわけにはいかない。
俺の経験上、世の中は善人ばかりではない。
ただ、悪人ばかりでもない。
良心がある人も存在するのだ。

(想像 開始)

例えば、給食の配送ドライバーT(30代前半 男性)がいるとしよう。
彼は学生時代、ボランティア活動に取り組み、慈悲深い心を得た。
そして、今日、配送車を運転していると、たまたま通り掛かった道の脇でうなだれている俺を目にする。
心配し、車を停めたTは、「大丈夫ですか?」「どこか具合が悪いのですか?」と優しい言葉を掛けてくれるだろう。
その善意に対し、「いやぁ、今日は2時間も寝てなくてね。俺、眠たいんですよ~」などと言えるだろうか?

例えば、一般事務職のM(20代前半 女性)がいるとしよう。
彼女は努力家で、また両親が学校の教師ということもあり、勉強に対し子供の頃から真面目に取り組んだ。
しかし、人一倍の努力家で真面目でも結果が出せない。
要領が悪く、努力が実を結ばないのだ。
やがて彼女は成長し、神戸の専門学校に通ったが、就職活動がうまくいかず、地元淡路島に戻り、人手不足の中小零細企業に雇ってもらうことに。
「有り難うございます!私のようなドジでのろまな亀を雇ってくれて…。私、頑張ります!」。
職場において、彼女は必死に働いた。
が、頑張れば頑張るほどミスにつながり、「ドジっ子OL」の烙印を押される。
時は流れ、ある日の朝、寝坊した彼女は職場に向けて必死に自転車を漕いでいた。
と、道の脇でうずくまる俺を発見。
「どうしよう…。何か深刻な病気を抱えている人かも知れない…」。
「放っておけない…。でも、私には医療に関する知識も経験も無い…」。
「あ、そうだわ!」と、前置きが長くなったが、いきなり救急車を呼ぶかも知れない。
そして、駆けつけた救急隊員に病状を聞かれて、「いやぁ、今日は2時間も寝てなくてね。俺、眠たいんですよ~」。
そんなことを言う神経の図太さは、俺には無い。

(想像 終了)

立ち上がり、「アホくさっ」。
俺はサドルに跨がって、淡路島の西側、海沿いの道を目指した。

つづく

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