(466)ロードの旅 ビワイチ編~スリップ・落車・転倒~

おそらく、俺の体は路面に叩き付けられただろうが、それは覚えていない。
覚えているのは、濡れた路面をシューっと横滑りし、縁石に軽く頭をぶつけたシーンからだ。

横たわりつつ目を開けると、雨のしぶきが跳ねていた。「そういや、昔、同じような景色を見たな」。
小学校に入る前だったと思うが、祖母の家の前でよそ見をして走り回っていると、郵便局のカブと激突。
頭から血を流して倒れた。
「痛い」よりも先に「びっくりした」という感覚。
そして、「眠たい」と思い、横になったままでいようとしたが、叩き起こされ救急車で病院へ。

ロードバイクは路面に倒れ、その横で俺もくたばり、「しばらく寝よう」。
そう思ったところで「大丈夫ですかー!?」、「どうしたんですかー?」。
Sさん(同行者 40代 男性)の声が聞こえた。
この時、意識が朦朧としていたのだろう。
「今の、そんなにおもろかったかな?Sさんの声、笑ってるように聞こえるけど」。
「俺がネタでこけたと思ってるんやろか?」。
「いやいや、ここまで体を張って笑いを取りにいけへんで」。

「大丈夫ですか?」。
また近くでSさんの声。
今度は深刻そうに感じられた。
「とりあえず、起きましょう」。
道の脇に腰掛けるよう指示され、ロードを俺の横に立て掛けてもらう。
「怪我はありませんか?」。
そう聞かれ、「あっ!」と思った。
「そやそや、俺、こけたんやわ」。
「びっくりしすぎて痛み感じてへんけど、絶対どっか怪我してるわ」。

自分の体をチェックする。
グローブをしていたのに、手の甲は傷だらけ。
4箇所も出血していた。
次に右膝。
結構な擦り傷はあったが、ライダースパンツに穴が開いていなかったのでセーフ。
あと、右の頬がヒリヒリしていたので、「あぁ、顔、やってもうたかぁ」。
「しばらくは、会う人会う人に『どうしたんですか?』、『喧嘩したんですか?』とか聞かれるんやろなぁ。あー、面倒くさっ」。
少々うんざりしつつ頬を触ると、出血はなかった。
おそらく無傷なのだろう。
セーフ。

「ロードの状態はどうですか?」。
Sさんに聞かれ、「はっ」と思う。
何年もロードに乗っていると、転倒した経験も何度かあった。
そのたびに、自分の体よりロードを先に心配する習慣が身に付いたのだが、今回の転倒は派手すぎたのだろう。
ロードのことをすっかり忘れていた。
雨に打たれながら、ロードをチェックする。
フレームに異常はないか、ライトなど付属品がどっかに飛んでいってないか。

「大丈夫そうです」。
Sさんに伝えると、「そうですかぁ。本当にびっくりしましたよ」と。
「前を走るkrmさんの体とロードが、急に分離しましたからね」。
もう一度、道の脇に腰掛け、「なるほど。後ろからはそう見えたんか」。
なんとなく納得。
「でもね、何でスリップしたんですかね?」とSさん。
「そんなもん、俺が聞きたいわ」だが、ぼんやりしている俺の前で、Sさんが路面を検証した結果、部分部分に苔が生えている箇所、汚れている箇所があり、雨のせいで滑りやすくなっているとのこと。
「あ…、そっか…」。
アイウェアを掛けていると、景色が常に夕方に見えるので、路面の細かな汚れを認識できなかったのだ。
また、実際にその汚れた箇所をビンディングシューズで歩いてみたところ、確かに滑りやすい状態だった。
「なるほど。ひとつひとつ謎が解けてきたな」。
気分的にはスッキリしたが、相変わらず体の節々が痛い。

「まぁ、気を取り直して走りましょー」とサドルに跨がり、米原市から長浜市へ進む。
Sさんには、「ビワイチは中止にして、ここで帰りましょうか?」と言ってもらえたが、守山駅からスタートして50㎞程度しか走っていないのに、「はい、中止で」とはなかなか言えなかった。

つづく

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