(304)ロードで行く和歌山旅行~トラウマ区間~

難波からうちの墓へ、そして和歌山への一本道。
26号線、スタート。

これから先、少しの間、心して走らなくてはならない。
俺にとって、トラウマの区間がある。

数年前、この日のようにロードバイクで墓参りに向かった時のこと。
ある激安スーパーの前で信号待ちをしていると、スーパーを出入りする客が目に入った。
店から出ると同時に、ビニール袋から缶ビールを取り出し、飲み始めるおっちゃんたち。
缶ビールを口に流しながら出てくるおっちゃんもいた。
ひとりやふたりではない。
「家に帰るまで待たれへんのか?」。
そう思いながら、ぼけっと眺める俺。
と、おっちゃんのひとりが、俺の方を見ているのがわかった。
細身で長身のおっちゃんだ。
ロードであっちこっち走っていると、「どこから来たん?」とか、「その自転車、高い?」と、知らない人から声をかけられることがある。
ので、なんとなくだが、「あの缶ビール飲んでるおっちゃん、絡んでくるんやろなぁ」。
おっちゃんは、右手に缶ビールを持ち、左手にビニール袋をぶら下げて近寄ってくる。
が、よく見たら、おっちゃん、スカートを履いてるではないか。
薄汚れて、枯れかけているように見える花柄のスカート。
「あかんわ。これはあかんわ…」。
信号が1秒でも早く青になることを、俺は神に祈った。
そんな経験が、俺にはある。

一心不乱にクランクを回す。
と、急に車の流れがつかえた。
「あ、住吉大社の近くまで来たみたいやな」。
初詣に参拝する人の車が出入りしているせいで、ちょっとした渋滞になっているようだ。
「まぁ、ええわ。とりあえず、トラウマ区間は突破した」と、俺は胸を撫で下ろした。

大和川大橋をわたり、大阪市から堺市に入った。
自然と喜びが込み上げてくる。
ここからしばらくは、そこそこ広くて走りやすい道が続くのだ。
世界のSHIMANOのお膝元だからか、堺市はロード乗りに優しい。

「環境は整っている。ついに伝家の宝刀を出す時がきたか…」。
和歌山まで30㎞巡行の可能性がある(今まで達成したことはないが)、この脚…堺で炸裂する。
と、自分の世界に浸っていると、腰に振動を感じた。
バックポケットからスマートフォンを取り出す。
「おう、晩、暇か?飲みに行けへんか?」。
友人からの電話。
「今日はあかんわ。俺、今、和歌山に向かってんねん。1泊2日のちょっとした旅の途中や」。
「そうか。じゃあ、また予定を合わせて飲みに行こや」。
「はいよー」。
電話を切り、「環境は整っている。ついに伝家の宝刀を出す時がきたか…」。
車道に戻り、クランクを回そうとしたその時、また腰に振動が…。
「1月4日やったら、和歌山から帰ってるんやろ?昼から飲みに行こうや」。
「1.4はあかんわ。知り合いの店で、東京ドームでやってるプロレス中継を観て酒飲むイベントがあってな、それ行くから」。
「そうか、1月5日は?」。
「1.5も東京ドームでプロレスあってな、俺、中継観なあかんねん」。
「1月6日は?」。
「1月7日は?」。
と、詰められてるような気分になってきた。
また、出発が1時間近く遅れ、梅田を経由することで時間をロスした穴埋めをしなくてはならない。
のに、友人と電話で生産性の無い話をしている現状。
気持ちがすごく焦ってきた。

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