(47)ラーメン、雨、YOSHI-HASHI。ロードバイクで和歌山旅行。-5

わずか10分ほどで、小雨が大雨に。
雨粒で視界がさえぎられる中、俺は立ち尽くした。
「物事が変わるのは一瞬」
ご存知、新日本プロレスのスター、YOSHI-HASHI選手が、俺の耳元でそうささやいたような気がする。
振り返ると、窓ガラスにうつる俺の顔。
完全に目が死んでいた。
人生で初めてだ。
自分の顔が、岸部一徳に似ていると感じたのは。

「ちょっといいですか?」
生気を失った俺に、コンビニの男性店員が声をかけてきた。
多分、大学生だと思う。
「もしよかったら、この傘を使いませんか?」と言って、俺にビニール傘を差し出した。
俺は心の底から感謝する。
この絶望的な状況の中で、手をさしのべてくれる存在がいることに。
彼の気持ちは本当に嬉しい。
ただ、傘をさして片手運転をしながら、雨の峠を越えるのは危険だ。
それに、ここまでの大雨だと、傘をさしたところで、家に着くまでにずぶ濡れになっているだろう。
店員さんに事情を伝え、最後に「お気持ちだけ頂きます。ありがとうございます」と言った。

いつまでたっても明るくならない、雨が弱まらないとなると、ここでグズグズしていても状況は何も変わらない。
時間を浪費するだけだ。
危険を承知で、うす暗い大雨の孝子峠に挑むことにした。
登り始めて、すぐに「やばい」と思う。
頂上から流れてくる雨のせいで、路面が滝のようになっている。
また、俺の横を水しぶきをあげて走るトラックにも注意が必要だ。
とりあえず、トラックに追い越される前に道の端に退避して、トラックをやりすごす。
それを繰り返し、時間をかけながら慎重に登った。
それにしても、せっかく天気予報を確認したのに(降水量まで調べたのに)、あれはなんだったのだろうか?
何の意味があったのだろうか?

しばらく登ると、俺と同じく大雨の中、峠越えをしたロード乗りが下ってきた。
滝が流れる路面を、スリップなど一切恐れず走っているように見える。
下りなのでかなりのスピードが出ているにも関わらず、ペダルをガンガン踏んでいる様子。
見ているだけでこっちが怖くなってきた。
「びびりながらゆっくり走る俺と、命知らずな彼とでは、どちらが奇行種なのか?」
そんなことを考えているうちに、峠を登り終え、大阪府に入った。

平坦な道をひたすら北に走る。
通勤ラッシュの時間帯になり、俺に泥をひっかけるように走る車が増えた。
車道を走らずに歩道を徐行しようとするが、不幸にも通学の時間帯ともかぶり、チャリ通している学生で歩道は占拠されている。
唇を噛み、俺はクランクを回した。

※この記事は、2019年2月11日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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