(309)ロードで行く和歌山旅行~幻想的な夜~

孝子峠を下り、和歌山市の市街地へ。
ホテルまであと3㎞ちょいだが、気を抜いてはいけない。
ここは、以前、暗くて前がよく見えず、溝の蓋を踏んでスリップした道だ。
慎重に進む。
と、左手にファミマが見えた。
トイレを借りたい。
水も飲みたい。
あと、何かホットスナックを食いたい。
考えてみると、朝起きてから何も食べていない。
店の前にロードバイクを止め、入店。
トイレの後、いろはすを手にレジに向かうと、ポケチキのプレーンがひとつ残っていた。
迷わず注文し、店の前で口に含むと、揚げたてだったからか、「こんなにうまいもんは久々に食った!」。

紀の川に架かる長い橋を渡り終えると、右手に南海の和歌山市駅。
街はし~んとしている。
俺は真っ直ぐ進み、ホテルに向かう。
ワカヤマ第一冨士ホテル。
過去にも2泊したことがあり、設備は古いが安い。
そして、朝食として食堂で振る舞われるおにぎりがうまく、とても有難い。

前回宿泊した際は、ホテルの隣にある駐車場で、ロードバイクを輪行バッグに収納する作業をしたが、この時、辺りは暗かった。
照明が点くホテル1階の駐車場で作業にあたる。
ロードをひっくり返し、ホイールを外す。
輪行バッグを広げる。
あとは、各パーツを収納するわけだが、ダメだ。
急に腰が痛くなり、中腰で作業をするのがきつい。
「40過ぎたら、急に体にガタくるで」と、酒を飲みながら誰かが口にしていた言葉を思い出した。
中腰は苦しいので、地面にあぐらをかき収納作業を終え、チェックイン。
それにしても、輪行バッグへの収納は、やればやるほど精度が高くなっている気がする。
収納し終えた輪行バッグに、思わず見とれてしまった。

5階の部屋に入り、まず風呂に湯を溜め、その間、服を脱ぎ裸に。
ピチピチのインナーパンツやソックス、ワイヤーで締め付けられたシューズを脱いで、解放感に浸る。
その後、故障していたスマートフォンの充電を試みると、「いけた!復活してるやん!」。
裸で小躍りする俺。
充電しながら、ホテル周辺で行けそうなラーメン屋を調べてみたところ、どこも正月休みのようだ。
少し歩けば開いてる店があるのかも知れないが、ビンディングシューズではあまり遠くまで歩けない。
「しゃあない。近場の居酒屋を探そう」。
「…」。
居酒屋も、やはり正月休みの店が多い。
「駅前の白木屋以外、確実に開いてそうな店無いなぁ」。
「白木屋かぁ。甲子園の駅前にあるのに、わざわざ和歌山まで来て白木屋は、悲しいなぁ」。
「でも、仕方ないよなぁ」。

風呂に入って体を温め、そして街にくり出す。
向かう先は白木屋。
「途中、チェーン店じゃない居酒屋、開いてたらええんやけどなぁ」と祈りながら歩き始めると、「あるやん!開いてるやん!」。
店内が混んでいないか。
ひとりでも入れそうか。
その2点が気になり、外から覗いてみると、いけそう。

ガラガラっと扉を開くと、「何名様ですか?」。
男性の店員さんに声を掛けられた。
坊主頭でごつめの体格。
思わず、「すみませんでした!」と叫びそうになる。
が、気を取り直して、人差し指を立てる(中指を立てる度胸は、俺には無い)。
「ひとりです」。
「あちらのカウンター席にどうぞ」。
テーブルと奥の座敷で宴会をしているようで、賑やかな声が聞こえくる。
俺は、他に客がいないカウンター席の隅に、ひとり腰掛けた。

「先にお飲み物をうかがってもよいですか?」。
「瓶ビールでお願いします。麒麟で」。
目の前に瓶ビールが運ばれた。
やっと一息つける。
「あと、刺身の盛り合わせもお願いします」。
実のところ、俺は魚があまり好きではない。
ただ、「刺身やと早く提供されるやろう」と思い注文した。
結果オーライ。
量も味も大満足。
「これで1,000円せえへんの!?信じられへんわ」。
活力がみなぎってきた。
「すみません。あげもちを下さい」。
揚げ出し豆腐の餅バージョン。
これもうまかった。
豚キムチにチーズを乗せた料理もうまかったし、ボリュームも満足(汗、かきまくったけど)。
「この店、派手さは無いけど、何食うてもうまい店やな」と感心。
酒も進む。
また、最初「こわっ」と感じた男性店員が、すごく丁寧な接客をしてくれたのも嬉しかった。
「次、和歌山に来た時、ラーメン屋もええけど、この居酒屋にも寄りたいな」。
そんなことを考えながら酒を飲んでいると、「ラストオーダーのお時間です」。
男性店員から声を掛けられた。

「明日の朝に飲む缶コーヒー、買って帰ろか」。
ほろ酔い気分で、駅前のセブンイレブンに向かって歩く。
辺りは、ゴーストタウンなみの静けさ。
し~ん。
「ほんまにここは県庁所在地か?」。
「まだ10時やのに、戒厳令でも敷かれてるんか?」。
とにかく、歩いている人が少なすぎる。
田舎の小さな町ならわかるが、ここには立派な駅と町並みがある。
が、人が少ない。
「寂しい町」という印象を越え、ここまで来たら、むしろ幻想的に感じる。
しばらくは、和歌山から目が離せない。

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