(321)西宮えびす(西宮神社)に向かって走る~母親の願い~

位置情報エラーにより、努力がふいになったことも知らず、クランクを回す。
「帰ってから、Stravaで今日走ったコースやタイムをチェックして一杯やろう」。
のんきにそんなことを考えていたが、後で絶望に打ちひしがれる俺。

それはそれとして、「えびす宮 総本山 西宮神社」に着いた。
サドルから降りる。
「確か、立派な門があるはずやけど、どこやったっけ?」。
辺りを見回していると、塀の脇にある立て札が目に入った。
「室町時代初期以前?に建てられた塀?おー、歴史ある塀なんやな」。
「京都の東寺もこんな塀やな」。
こういうちょっとしたことに気付いた時、歴史的建造物の面白さを感じる。

境内に足を踏み入れる。
地面に目をやると、砂利道ではない。
ということは、ロードバイクで走れなくもない。
「ロードを押して歩くより、走った方が楽やな」と、サドルを跨ごうとしたが、「あかんわ」。
「境内を走り回るんは、やっぱり不敬な行為ちゃうかな」。

軽くハンドルを握り、ゆっくりと歩いて進むと、テントが見えた。
「フランクフルトでも売ってるんか?」と少し期待したが、「大陶器市」。
たくさんの陶器が陳列されている。
「自炊しない俺にとって、特に用事も無いな」。

10年近く前に訪れた時は、十日戎の日だったので、人も屋台も多く賑やかだったが、この日は静か。
誰にさえぎられることもなく先に進むと、立派な本殿と拝殿。
ロードが邪魔なのでちゃんと参拝せず横切ったが、「近いうちにまた伺いますので」と心の中でつぶやいた。

小さな池が視界に入った。
観光スポットらしい感じ。
池に架かる短い橋を渡ろうとしたが、「ロードを押して渡るのも不敬な気がするわ」。
周りを適当にうろついた後、ベンチに腰を掛ける。
「そっれにしても静かやなぁ」。
ぼーっとしていると、小学生低学年ぐらいの女の子と、そのお母さんが目の前を通り過ぎた。
「随分と昔、まだ小さい時に、俺も母親と神社に行ったなぁ」。
当時、母親が神様に何を願ったのか知らないが、俺に関する願い事は、ことごとく叶わなかったのではないかと思う。
一流大学に進学したわけでもなく、一流企業に就職したわけでもなく、未だに独身の息子。
何か申し訳ない気持ちになり、その場を離れた。

門をくぐると、大阪市と神戸市を結ぶ43号線。
いつものことだが、そこそこの渋滞。
塀の中の静けさが嘘のようだ。
俺は、喧騒に包まれた中、家に向かって走り出した。
そして、約15分後、Stravaに絶望するのである。

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