(331)尼崎へ~かごもとさんと弥次郎兵衛さん~

朝、起きてすぐにベランダを開け、空を見上げた。
天気はあまり良くない。
念のため、スマートフォンの天気予報アプリをチェックすると、曇りだが雨は降らないようだ。
「じゃ、武庫川サイクリングロードを走りに行こかー。Stravaの記録を更新しよう」。
ロードバイクを担いでマンションの階段を降りる。
路面に目をやると、一部、湿っていた。
昨日降った雨のせいだ。
「サイクリングロードの路面はどうやろ?」。
少し気になった。

サイクリングロードの上に架かる橋から路面を確認。
「乾いてたらええな」という願いは裏切られ、ここも一部湿っていた。
「う~ん、これやと、北側、宝塚の方は水溜まりが残ったままやろなぁ」。
なるべくなら、雨の後の乾ききっていない道は走りたくない。
泥がはねてジャージとロードが汚れるのは嫌だし、スリップするのも怖い。
「サイクリングロードを走って、Stravaの記録にチャレンジするのは中止で」。
あっさりと判断を下した。
ただ、「せっかくサイクリングジャージに着替えてここまで来たのに、ろくに走らず帰るのも納得いかんよなぁ」とも思う。
「そやなぁ」。
「泥をかぶらんでも走れる道で、どっかないかな」。
「あ、おもろいとこあるわ!」。

橋を渡ると尼崎市。
そこから東へ、阪神の出屋敷駅に向けクランクを回す。
「三和商店街に行きたい」と思った。
阪神電車の尼崎駅から出屋敷駅にかけて大きな商店街群があり、俺は年に数回した来ないが、うろうろしているだけで結構楽しいところだ。
いつも、ハンドルに手を掛けて、辺りを見回しながら歩く。
「安くてうまそうなもん、なんぼでもあるなぁ」、「ここ、何でも揃いそうやなぁ」と好奇心が掻き立てられる。
さらに、三和商店街には「国産牛ホルモン専門店 かごもと」さんがある。
大好き。

ホルモンが陳列されたショーケースとは別に、店頭にホルモン焼きコーナーがあり、わざわざロードを止めてロックなどせずに注文、商品の受け取ることができる。
これ、かなり助かる。
また、注文の際に「ここで食べます」と言えば、ホルモン焼きを容器に入れてもらい、その辺で食べることも可。
しかし、俺はいつも「持ち帰りで!」。
家に帰って酒を飲みながら、ゆっくり食べたいのだ。
この日も、200gのホルモン焼きが入ったビニール袋を受け取り、サコッシュにつっこんだ。

そしてもう1軒、寄りたい店がある。
かごもとさんを少し北に歩き、角を左に曲がったところにある弥次郎兵衛さん。
小さな弁当屋さんだ。
どうやら、お米屋さんが経営しているらしく、「ご飯が美味しいはず」と期待を込めて初訪問。

道沿いにショーケースがあり、その上にテイクアウト窓口。
お店のおばあさんの顔がちらっと見えた。
かごもとさんで買い物した時と同様、ロードを押したままショーケースの前に進む。
カレーライスやおにぎり、かやくご飯などの食品サンプルが置かれたショーケース。
「さすが、米ばっかりやな」。
他にメニューらしいものが貼られていないか目線を少し上にやると、窓口の前に、作り置きのおにぎりがあるではないか。
「この俵むすび、うまそうやな。でも、なんか赤いのはみ出してるけど、何やこれ?」。
「梅干しか?」。
「ちゃうわ。よう見たら海老の尻尾やな」。
「てことは、これ、天むすかぁ」。

「何にしましょう?」。
窓口から、にこやかな表情のおばあさんが顔を出した。
「これで」。
俺は、天むすの3個入りのパックを手に取り、おばあさんに渡そうとしたが、「帰ってからホルモン200gも食うのに、さらに天むす3個は多すぎひんか?」と思い、「やっぱりこれで」。
2個入りのパックをおばあさんに渡し、代金を払い、天むすをサコッシュにつっこんだ。

「早く帰って、食いたい。飲みたい」。
欲望がクランクを回す。

芋焼酎の水割りをテーブルに置く。
ホルモンを小皿に移し、準備はできた。
レバー、ハチノス、ハラミなど様々な部位をひとつひとつ箸でつまみ、口に放り込んでよく噛み締める。
「うまいわぁ」。
「ほんま、うまいわぁ」。
そして、焼酎をちびっと飲み、またホルモンを…を繰り返した。
「さすが、200gは食い応えあるわぁ」。
「ありすぎるわぁ」。
チビチビとホルモンを食い、焼酎を飲んでいるうちに、十分すぎるほど満腹感が得られ、徐々に疲れてきた。
まぁ、味は最後まで楽しめたが。

「腹いっぱい。もう寝よか」。
横になりかけた。
しかし、楽しみにしていた天むすが残っている。
「3個入りのパックを買わんと2個入りにして、俺、ナイス判断やったで」と思いながら、ひとつ口に含んだ。
中の海老がぷりぷりしていて、食感がいい。
その上、塩加減が絶妙で「めちゃめちゃうまいやんけー!」となった。
腹が膨れても、うまいものはうまい。
「まだまだいける!」。
「それにしても、しくじった…。3個入りを買っとけばよかった…」。

一瞬で天むすを平らげ、腹も心も満たされた。
自然と体が横になる。
そして、眠りに入る前、ふと思った。
「食い過ぎたな」。
「あぁ、これ、また太るわ。体重計乗るん嫌やなぁ」。
「俺って、ほんまに学習能力無いよなぁ」。

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