(337)ロードバイクで伊勢を走る~松阪城~

「そろそろ行きましょか」。
Sさんと俺は、松阪駅から松阪城に向けて走り出した。
街並みに目をやりながら、ゆっくりと進む。
小さく、そして歴史を感じる古いお店がちょこちょこあり、映画のセットのように感じた。
「俺、こういうところ好き」と思いながら脚を回していると、左足に違和感。
冷静になり、「脚を回す度に何かあたってるよな」。
走りながら後ろをチラチラ見て確認する。
「あ!」。
リアブレーキのクイックリリースレバーか開いたままだった。
松阪駅前で、フレームをホイールをはめる際、Sさんと話し込んで舞い上がってしまい、閉じるのを忘れたのだろう。

軽く走って5分ほど。
松阪城に着いた。
Sさんに誘導され、城の隣の駐車場へ。
ロードバイクを止めるためだ。
キョロキョロしながら、「あれ、おかしいなぁ」とSさん。
「駐車場を管理するおじさんがいるので、自転車を見張ってくれるように一声掛けようと思ってたんですけどねぇ」。
「はぁ」と俺。
「そのおじさんが、今日はいないみたいですね」。
盗難に対して警戒しまくってる俺としては、「マジ!?」と思ったが、仕方がない。
「とりあえず、そこら辺のフェンスに立て掛けて、チェーンでロックしましょ」。
そう言いながらも、内心、心細い。
ただ、松阪城を見学した後、駐車場に戻ると、フェンスの近くに白バイに股がった警官が待機していたので、「ええガードマンになってくれたわぁ」と思った。
結果オーライだ。

「大阪城と違って、ここは何も無いですよ。石垣だけですよ」とSさんは言っていたが、俺にとっては、石垣だけでも十分。
確かに、天守も無ければ櫓も無い。
でも、立派な石垣を見るだけで俺は萌えるのだ。

たいした距離ではないが、天守台に向けて歩く。
登る。
SPD-SLシューズを履いたまま俺にとっては、ちょっときつい。
石の階段など滑りそうになって怖い。
が、松阪城を堪能したい気持ちが勝つ。
蒲生氏郷の松阪城、隅から隅まで見て回りたい。

Sさんの後について歩く。
鉄柵も何も無い石垣の上から景色を目にすると、自然と足がすくんだ。
「Sさん、下に昔の家みたいなんがありますけど、あれは何ですかね?」。
「あぁ、あれは、確か本居宣長が隠居してた時に住んでいた家かなんか、塾かなんかそんなのだと思います」。
俺としては「結局、何やねん?」だが、「まぁ、どっちでもええか」。

相変わらず、石垣の上をSさんは歩き続け、俺は後に続いたが、本当に怖い。
崖っぷちを歩いている気分。
その上、SPD-SLシューズでペンギン歩きをしているので、ちょっとしたことでこけるかも知れない。
このシチュエーションでは、「こける=死」だ。
しっかりと足元を見て歩く。
もう、観光気分ではない。

「梅の花はまだ綺麗に咲いてませんね」とSさん。
「ちょっと…梅の花どころの騒ぎじゃないよ、今の俺は。命懸けやで」と思ったが、心にゆとりを持とうと自分に言い聞かせて写真に撮る。
内心、びびりまくりながら。

一通り見て歩き、駐車場に戻る。
「この後は、唐揚げ弁当の店に行くんですよね?」。
Sさん、「はい。唐揚げ弁当の予約もしてます。時間に余裕を持たせたスケジュールを組んでいるので、今からお店に向かっても、かなりゆとりを持って走れます」とのこと。
「やっぱり、この人は大人やわぁ。もともときっちりした人なんやろけど、遊びでも仕事の延長のノリでしっかりしてるわぁ」。
うん、俺と同じ人種だ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする