(339)ロードバイクで伊勢を走る~雨の田丸城~

少し残したが、唐揚げ弁当を食った後、次の目的地へ。
向かう先は、田丸城だ。
俺のリクエスト。
俺、城好きなので。

「距離はそれほどありません。伊勢市に入ったところです」とSさん。
「コンビニか自販機はありますか?」。
「行く途中にはありますが、田丸城の周辺は田んぼしかありませんねぇ」。
ブリーフィングを終え、出発。

小雨がだんだんと本気の雨になる中、前を行くSさんに張り付くように走る。
サイコンを見ると、常に時速27~29㎞。
平坦な道が続いたので楽だったが、困ったのは、やはり雨。
プラス、Sさんの後輪から俺に飛び散る水しぶき。
「思いっ切り顔にかかったやんけ!」。
Sさんの進路から少しずれて走るように心掛ける。
が、Sさんは俺の苦労に気付いていないのだろう。
自由気ままに右へ左へラインをとる。
「あ、また正面にきたわ」。
シャワー。
「勘弁してくれよ」。
心からそう思った。
しかし、既に雨でびしょ濡れだったので、「もう、どうでもええわ」という気分にもなった。

数十分前、唐揚げ弁当を食いながら、「伊勢街道を走って、そこからどうたらこうたらで旧伊勢街道を走って…」とブリーフィングがあったが、もう、どの道を走っているのかわからない。
と言うか、どうでもよくなった。
新でも旧でもどっちでもいい。
ただ、古めかしい蔵がちょくちょく見える通り(旧?それとも裏道?)は、味わいがある景色で印象に残っている。

田んぼに囲まれた一本道に出る。
遠くに山が見え、左右にはずーっと田んぼしかない。
Sさんはよく、「伊勢は田舎なので」と謙遜していたが、普通にコンビニや飲食店があり、交通量が多い道もある。
俺は、「ここはそれほど田舎じゃないですよ。俺、今までもっと田舎、もっととんでもない田舎を走りましたよ」と思いながら聞き流していた。
が、この一本道を走っていて、「ここは田舎だ!」と強烈に感じた。
写真を撮って、「俺、この前、北海道に行ってん。すごい緑豊かやろ?」と知り合いに見せたら、普通に信じてくれただろう。
そんな景色。
そんな田舎。

ジャケットのみならず、インナーウェアもパンツもびしょ濡れになり、体が一気に冷え込んだ気がする。
バックパックの中に着替えを入れているが、それまでびしょびしょになっているような気もする。
「明日、どうすんねん?」。
不安になったきた。

走行中、前を走るSさんがよくハンドサインを出してくれた。
助かる。
この時も左手を伸ばし、そして指差して、「目的地はここですよ!田丸城の入り口です!」とサインを出してくれた。
ただ、たまに道を間違えているケースもあり、「愛嬌がある人やなぁ」。
数日前、俺と走るために、Sさんは下見をしてくれたそうだが(有り難い)、まぁ、細かいところまではいちいち覚えていなかったのだろう。

少し戻って、今度は本当の田丸城の入り口へ。
威厳を感じるね。
石垣に。
二人ともロードバイクを降りて、ハンドルに手を添えて登る。
雨はいっそう強くなったが、「それはそれで風情があるやん」だ。

天守も櫓も無い。
もちろん、大阪城のような売店など無い。
また、規模も大きくないお城だが、素っ気なくて良い。
自分語りをさせてもらうが(いつもしてるけど)、いろんな城を巡っていると、テーマパーク化していないお城に魅力を感じるようになった。
田丸城は、当然○。

SPD-SLシューズを履いて、雨に濡れた道を上るのは苦労した。
滑りそうになる。
足元に気を使いながら、一歩一歩進み、本丸に着いた。

石垣の上から地上を見渡すと、田んぼ、田んぼ、田んぼ、田んぼ、田んぼ。
そして、少しの家。
「この辺りって、城が建てられた時から一切発展してないみたいですね」。
雨の中、Sさんが笑顔でそう言った。
「うっわ、なかなか辛辣なことを言うなぁ」と思い、俺は吹き出しそうになった。

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