(340)ロードバイクで伊勢を走る~びしょ濡れのジャケット、その他ウェア類~

雨が降りやまない。
走るには良い環境とは決して言えないが、次の目的地に進まなくてはならない。
伊勢忍者キングダムの安土城へ。

「路面もウェアもびしょ濡れやのに、まだ走り続けるのはちょっとなぁ…」と思う。
「安土城を見たい!」とリクエストしたのは俺なのに、どんどん下がっていく俺のテンション。
そんな時、Sさんから有り難すぎるご提案。
「一度、家に帰って車を出しますので、予定を変更して、伊勢忍者キングダムには車で行きましょう」。
「え、本当にいいんですか?ご迷惑じゃないですか?」と口では言いながらも、俺の心の中は「ラッキーすぎるぜ!」。
Sさんが地元の人で、且つ融通が利く人で、更に心配りができる人で本当によかった。
本当に助かった。

「では、krmさんが泊まるホテルまで、このまま一緒に走って行きましょう。krmさんがチェックインして、1時間ほどしたら、車で迎えに行きます」。
「わかりました。じゃあ、自分はチェックインして風呂に入って待ってますわ」。
そんなやりとりをした後、予約した伊勢市のホテルに向かった。

相変わらず、雨に打たれる。
Sさんが前を進み、俺はその後輪から飛び散る水しぶきを受けながら走る。
「雨が降るのは、出発前から予想してたけど、まさかここまでとはなぁ」。
「それにしても、感心するわぁ。Sさんの走り」。
普段、俺ひとりで走っている時、雨に出くわしたらスピードを落とす。
交通量の多い道を走るケースでは、歩道に逃げる。
スリップするのが怖いからだ。
ところが、Sさんはマイペースに脚を回し続ける。
「小雨の時は、(俺にとっては無意味に)歩道を走るケースが目立ったのに、今みたいにびしょ濡れの車道からは逃げずに、時速30㎞手前のスピードでよく走れるよな」。
「怖くないんかな?俺の感覚ではすごく大胆やと思う。Sさんの走り」。
まぁ、人それぞれ走り方が違うのだろう。
初めて一緒に走る人をじっくり観察して、「勉強になるわぁ」とか「ええ経験したわぁ」としみじみ感じた。

大きな川が目に入る。
「宮川です。ホテルまで、もうすぐです」とSさん。
「え、この橋、こっち側からやと歩道が無いやん。逃げられへんやん」と少しびびる俺。
前方に亀裂やゴミが無いか気にしながら橋を渡る。
ふと川に目をやると、水も風景となる空も灰色に見えたが、「きっと天気がええ日は綺麗な川なんやろなぁ」。
そんなことを考えながら脚を回し、視線を前方に戻した。

Sさんがハンドサインを出した。
「あれ!あれ!」と何か訴えている。
「なに?なに?」。
Sさんがスピードを落として、「あれ、何に見えます?」。
指を差すその先には、正面がガラス張りの小屋があるのだが、「喫煙ルーム?」、「喫煙スペース?」。
いずれにしても、喫煙者を隔離する部屋らしき小屋。
「でも、おかしいよな。ここは人通りも少ないし、そこら辺で煙草吸い放題やろ?」。
「あ、違うわ。地下鉄の入り口や!あの中に階段があるんや!」。
「いやいや、伊勢に地下鉄入ってんのか?」。
ひとり悩んだところ、「あの電話ボックスみたいなの、駅なんですよ!」とSさん。
俺は「冗談やろ?」と思ったが、「Sさんって、こういう冗談言うキャラって感じもせえへんよなぁ」とも思う。
翌日、家に帰ってからネットで調べたところ、Sさんの言っていた通りだった。
山田上口駅の駅舎。
「世の中は広いな」と実感する俺であった。

ではなく、雨の降りしきる中、やっとホテルに着いた。
ホテルの前で、ロードバイクを輪行バッグに収納しようとしていると、「そのまま中に入れて下さい」。
きちっとした身なりで、背の高い男性から声を掛けられる。
ホテルのスタッフだった。
「輪行バックに入れず、そのまま部屋に持ち込めるのか。手間が省けて都合がええわ」と思い、ロードを担いでホテルに入ると、フロントの前に設置されたサイクルラックに案内された。
「ここにお願いします」。
「盗まれへんか?」と少し不安になったが、「はぁ」。

部屋に入り、びしょ濡れのジャケット、バイカーズパンツ、アンダーウェア、インナーパンツ、ソックスを脱ぎ捨て、風呂に入る。
シャワーを浴びながら浴槽にお湯を溜め、体を温める。
「気持ちええわぁ。眠くなってきたわぁ」と思ったが、後ほどSさんが車で迎えに来てくれる。
寝てる場合じゃない。
それよりも、だ。
びしょ濡れのウェア類をなんとかしなければ。
濡れたウェアを着て車に乗り込むと、Sさんに迷惑を掛けてしまう。
「どうしょうか?」と考え、「これしかないな」と結論を出した。

必死になって、ドライヤーでウェアを乾かす。
アンダーウェア、インナーパンツ、ソックスは替えを持ってきたが、ジャケットとバイカーズパンツは何とか乾かさなくてはならない。
びしょ濡れのウェアにドライヤーをあてると、気のせいか湯気が出ているような。
ウェアを触り、「まだまだやな」、「もうちょいやな」。
さらに根気よくドライヤー。
何度も繰り返し、「そこそこ渇いてきたな」というタイミングで、「車を出しました。もうすぐホテルに着きます」。
Sさんからのメールが入った。

努力が実り、ウェアはそれなりに渇いた。
着てみると少し気持ち悪いと感じたが、気にしないことにする。
「もう、Sさんが1階の駐車場に待機しているかも」と思い、「待たせてはいけない」。
焦る俺。
そそくさと外出する用意をしていると、窓の外から光が射しているではないか。
「今頃?今更、雨が止んだ?今更、天気が良くなって、なんかむかつく!」。

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