(341)ロードバイクで伊勢を走る~伊勢忍者キングダムの安土城天守~

「何でなん?何で今さら晴れたん?」。
やりきれない気持ちで、助手席から窓の外を眺める。
と、「あそこ。あそこのイオンにはいつもお世話になっています」。
運転席でSさんが少し大きな声を出した。
Sさんは、松阪から伊勢まで一緒に走り、道案内、観光案内もしてくれたが、イオンまで紹介してくれるとは。
何て親切なのだろう。

我々は車で伊勢忍者キングダムに向かう。
山と山の間を通る道。
「あそこ。あそこに見えますよ」。
「またイオンかよ」と思いながら、指示された方向に目を移すと、「うお!安土城や!」。
かなり前だと思うが、伊勢忍者キングダムは、確か伊勢戦国時代村という名称だった。
基本、テーマパークに興味の無い俺だが、「安土城天守があるんや!?復元されたあの天守があるんや!?」と興奮した覚えがある。
もしかして俺だけかも知れないが、おそらく城好きの大多数にとって、安土城天守は「夢の城」、「幻の城」(だろう)。
と言うのも、実体がわからない。
学者が提示する安土城天守は、「根拠はあるけど、多分こうちゃうかな?」という感じで、何が正解かはわからない。
だからこそ、魅力は深まる。
これから見る安土城天守も100%正解では無いだろう。
それでも、俺は目に焼き付けたい。

伊勢忍者キングダムに着いたのは、17時過ぎ。
17時を過ぎると、入場料がただになるという激アツ情報をSさんが仕入れてくれたおかげで、「ただで見れるやんけ!」と俺は喜んだ。

スッカスカの駐車場に車を止め、「さぁ、行くで!」。
ちょっと緊張しながら、入り口に向けて歩く。
インフォメーションに飾り付けられたたくさんの提灯とともに、遥か先に安土城天守が見えたが、距離がある分、期待感が大きくなってきた。
楽しみ。

1円も払わずに入場。
戦国時代なのか江戸時代なのかよくわからないが、それぞれ個性的な格好をしたアトラクションスタッフが、お客さんと交流して楽しませている。
ガラガラだが空気はすごく良い。
ただ、癒されてる場合ではないのだ。
俺は進まなくてはならない。
安土城天守に。

お客さんは少ないが、提灯だらけの施設がいたるところにあり、とても賑やかに感じる。
また、何故か懐かしい雰囲気。
時代劇のセットの中で過ごした経験は無いが、何故か懐かしい。
「何でやろ?」と思いながら、安土城天守まで少しずつ進む。
が、いくら歩いても近付けない。
安土城天守は山の向こう。
たどり着けない。
道を探して歩いても、「あら、この道は行き止まりやん」。

顔に深い傷が入った(メイク)いかついアトラクションスタッフに声を掛け、「何でござるか!?」みたいなことを言われた後、安土城天守に行く道を聞いてみる。
すると、「今の時間帯は行けないでござる」。
伊勢忍者キングダムは、いくつかの区画に分けられており、我々が訪れた17時以降は、天守の区画まで行けないようだ。
「なんやそれ」と思ったが、提灯だらけの施設を見ているだけで結構楽しかった気もする。

どうも引っ掛かる。
駐車場に向かって歩く中、俺は考えていた。
「何でこの景色を懐かしく感じるんやろう?」と。
提灯だらけの櫓や古風な外観の建築物。
昭和50年代に生まれた俺にとって、懐かしいわけがない。
異文化だ。
「子供の頃に行った盆踊りの記憶が甦ったのか?」。
「いや、そんなんじゃない」。
「じゃあ、何?」。
思い出す作業、考える作業。
必死になる。
「あ、わかった」。
「『がんばれ!ゴエモン からくり道中』の景色や」。
すっきりした。

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