(349)ロードバイクで伊勢を走る~鳥羽展望台から最後の難関に向けて~

「おかしいな。感動が少ない」。
鳥羽展望台にたどり着き、一息つきながら景色に目を向ける。
海も空も綺麗。
だが、「いまいちグッとけえへんな」と。
「疲れすぎてて感覚が麻痺してるんやわ」。
その時はそう思ったが、家に帰って今回の旅の写真を見て、原因がわかった。
伊勢から鳥羽にかけて走る間に見た景色。
それは、どこもかしこも綺麗だった。
俺は自然の綺麗な景色に慣れてしまい、「綺麗なのが当たり前」の感覚に陥っていたのだ。

「ちょっとうろうろしてきます」とSさんに声を掛け、俺は少し歩く。
ずっとサドルに股がっていると、無意味に歩きたくなる心境になる。
近くに、土産物売場?レストラン?があった。
「トイレでも借りようか」と思ったが、実はそれほど尿意など無い。
それは、まぁいい。
「ちょっとでも歩こう」と足を踏み出したが、SPD-SLシューズを履いていることを忘れていた。
昨日からこのシューズで歩きまくったため、足首が痛い。
だが、5、6歩で引き返すのも格好悪い。
Sさんが見ている。
しょうもないプライドを守るため、無理して歩く。

Sさんの元に戻り、ブリーフィング。
「面白展望台はパスということで、青峰山 正福寺に向かいます」。
「はい」と俺は頷く。
「しばらく、パールロードから逸れた道を走ります」。
「まず、青峰山の麓を目指して進みましょう」。
「麓には、中小企業があり、目印になると思います」。
また「はい」と頷きながら、「『会社』とか『社屋』って表現でいいのに、何で『中小企業』?」。
「この際、会社の規模はどうでもええような」。
心の中でツッコミながら、Sさんの説明を受けた。

パールロードを逸れると、路面の状態があまり良くない。
亀裂もあるし、落ち枝も多く感じた。
「怖いわぁ」と思いながらクランクを回したが、前方のSさんは相変わらず軽快に走り続けている。

鬱蒼とした山あいの道を進むと、久々にまともな建物が見えた。
「あぁ、これか。Sさんが言ってた『中小企業』」。
中小企業を少し通り過ぎ、青峰山に続く道に入る。

最後の難関が、目の前にある。
あと20mちょっとで登りだ。
傾斜もきつそう。
しかも、頂上の正福寺まで駆け上がって行かなければならない。
雰囲気的(大自然すぎる)に、途中、コンビニなど無いだろう。
「念のために水を買っときたいな」と思ったら、都合良く自販機があった。

100円の水を買い、ぐいぐい飲む。
そして、残りをボトルに流し込みながら、チラッとSさんを見ると、ライフガードだかジャングルマンを買っているではないか。
「わかるよ」と思う。
「気持ちはわかるよ」と。
暑い時や長時間運動をした時、ライフガードもジャングルマンもめちゃめちゃうまい。
「それはわかるよ」。
「わかるけど、今からきっつい登りやで」。
「そんなん飲んだら、余計に喉が渇けへんか?」。
脚は痛いし鼻炎のせいで呼吸も苦しく、人の心配などしてる場合では無い俺だが、この時はさすがにSさんを心配した。

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