(352)ロードバイクで伊勢を走る~志摩磯部駅から帰る~

ゴーーゴーーゴーーと、Racing Zero Niteからうるさくも心地よい音が鳴り響く。
それを聞きながら、平坦な道を走れる幸せを感じた。
もう、アップダウンは嫌。

帰りの電車、志摩磯部駅から乗る特急は予約済みだ。
あとは駅に向かって走り、特急に乗って帰るだけ。
疲労感と解放感、そして名残惜しい気持ちを抱え、クランクを回す。

着いた。
「ここは、ゴーストタウンなんですかね?」。
志摩磯部駅の駅舎は、志摩スペイン村と同じコンセプトで建てられたのだろうか。
「おぉ、スペインの建築物ってこんな感じなんやぁなぁ」と印象を受ける大層な建物だ。
こだわりを感じる。
が、白い駅舎が部分的に黒ずんでいて、何か怖い。
「霊媒師でも呼んだ方がええで」と直感的に感じる。
人など歩いていないし、もともとはお店があったであろう周辺はシャッターが閉まり、隣のホテルも黒ずみ、なかなか退廃的な雰囲気。
「ゴーストステーションですね」。
隣でSさんがぽつりと言った。

松阪駅からスタートし、うまいものを食いながら伊勢市、鳥羽市、志摩市と走った今回の旅。
スケジュールを組んでくれたのは、全てSさんだ。
俺のリクエストに応えつつも、常に時間に余裕をもたせて、何らかのアクシデントがあっても対応できるように計画されている。
が、それが裏目に出たっぽい。
「さすがに早く着きすぎやろ…」。
志摩磯部駅の前で途方に暮れた。
1時間以上、特急を待たなければならない。

「駅の周辺で適当なお店に入って時間を潰そう」。
Sさんも俺もそう考えたが、無い。
店が無い。
ロードバイクで走れば、ぽつぽつといくつかの店があるようだが、「もう、あまり走りたくない」と素直に思う。
Googleマップをチェックし続け、妥協に妥協を重ね、近くにイートインスペースのあるローソンを発見。
「ローソンでいいでしょ」。
移動。

昨日は、唐揚げ弁当と伊勢うどんを食った。
この日は朝に唐揚げ弁当の残りを食った後、牡蠣を気が狂うほど食った。
食欲はかなり満たされているのだが、頑張って走った(一部は歩き)の自分にご褒美をあげたい。
ジャンクなご褒美を。
店内をうろついてコロッケやからあげくんをチェックしたが、「これじゃないねんなぁ」と思い、カップ麺コーナーに足を進める。
「尾道ラーメンかぁ」。
「おー、博多とんこつ」。
「うまそうやん」。
習慣で、ついカロリーを確認しそうになったが、「今日は気にするな」と自分に指令を出した。
カロリー表示は見ずに尾道ラーメンをレジに持って行き、イートインスペースでお湯を入れて席につく。
隣で、先にSさんがカップ麺をすすっていたが、何かヘルシーなものをチョイスしたっぽい。
まぁ、チラッと見ただけなので、具体的に何ラーメンを食っていたのかはわからないが。

記憶は曖昧だが、するめかチーズ鱈をSさんが買ってきてくれた(レジも売場もすぐそこ)。
ふたりでちびちび食いながら、「何か世間話をした方がええんかな?」と俺は思ったが、疲れていたのであらゆることが面倒くさくなり、無言で噛み締める。
するめだったかチーズ鱈を。

特急が志摩磯部駅に着く30分前になり、「そろそろ行きましょか」となった。
くどいようだが、するめだったかチーズ鱈を「これ、どうぞ。電車の中で食べて下さい」とSさんに言われ、俺は喜んでペットボトルの焼酎を買いに行った(売場もレジもすぐ)。

駅に着いて、輪行バッグにロードを収納する。
普通なら、通行人に迷惑を掛けないよう隅っこで作業するが、この駅はどこでもOK。
誰もいないから。

バックポケットからスマートフォンを取り出して時間を確認すると、まだ余裕がある。
ただ、見て回るものも無さそうな雰囲気なので、フォームに降りた。

駅自体は立派。
なのに誰もいないフォーム。
俺は18時11分の特急に乗るが、Sさんは18時30分ぐらいだったか、俺より後の電車に乗って帰る。
ブログが縁となり、今回の旅行を企画してくれて、案内してくれたSさんとは、もうお別れになる。
感謝の言葉を言いまくるのが筋であり、頭の中で自然といろんな言葉が浮かびまくったが、疲れすぎていた俺。
話すのが苦痛。
特急が来たので、「今回はいろいろ有り難うございました」。
そう言い残して特急に乗り込む。
もうね、ほんまに疲れてたの。

予約した車両の座席に座ろうと思ったが、おかしい。
俺は輪行バッグを置くために最後列の座席を予約したのだが、それより後ろに3列ほどある。
「はぁ?どういうことや?」。
最後列には、大学生ぐらいの姉ちゃんがひとり座っていたので、一応、「ちょっとすみません」(少し声をしぶめに)と声を掛け、座席の後ろと壁の間に輪行バッグをねじこんだ。

もうね、途中から記憶が曖昧になると言うか、あらゆることがどうでもよくなり、いちいち覚えていないのだが、Sさんからもらったスルメかチーズ鱈を口にほりこみ、ペットボトルの焼酎を味わった。
ほろ酔い気分で窓の外を見ていると、いつの間にか上本町に着き、「大阪やぁ」。
ほっとする。

輪行バッグを担いで乗り換え、うちの最寄り駅に着いた。
駅から家までの間に、知り合いのMさんが経営する飲み屋がある。
「もう今日はロードに乗らんし、一杯飲んで帰ろか」。
Mさんに会って、酒を飲みながらちょっとした土産話をしたい。
「伊勢に行ってきましてね。牡蠣食ったんですけど、一緒にいた人が剥いた牡蠣にはねぇ、小さい蟹が入ってたんですよ」。
こんな話でもすれば、「え、そうなん!?そんなんあるん!?」みたいな感じで盛り上がるかなと思ったが、実際はそうでもなかった。
むしろ、ちょっとスベった感じ。

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