(359)サイクリングがてら、豚まんを買いに行く~就職活動の思い出~

福島区の551蓬莱で買い物を終え、また2号線に戻り、西宮市へ帰る。
「早く家に着いて食べたいわぁ」。
自然と、行きよりも速くクランクを回している気がする。

「ええ買い物したわぁ」。
気分良く走っていると、ふと思い出した。
「昔、蓬莱の会社説明会に行ったよなぁ」。

当時の俺は、どうしようもなくだらけていて、アホな大学を留年した上に、さらに2年目の留年にリーチがかかった大学5回生。
本来は、1年遅れでも真面目に就職活動をしなくてはならないが、6回生に昇格しないように単位も取得しなくてはならない。
はっきり言って、まともに就職活動などできる身分ではなかった。
ただ、親の前では「もう大丈夫だよ。卒業して就職するよ」というポーズをとる必要があり、なんとなくだが、暇な時、合同説明会に顔を出していた。

そこで、小学校から大学まで(おっさんになった今も)付き合いがあるIと出くわす。
当時、バイト先まで同じのI。
「こんなとこでも顔を合わせるとは、変な縁やなぁ」と思いながら、ふたりで何社かのブースで説明を聞く。
と、その中に「おぉ、このブース、豚まんの蓬莱やん」。
「何か面白い話を聞かせてくれそうやなぁ」と顔を出してみた。
内容はほぼ忘れたが、覚えているのは、社内で業務以外での繋がり、サークルがあり、その中に「劇団551」があると。
当時、Iは某大学の社会学部の学生で、人権に携わる研究やボランティアを通し、劇団に入り学校や老人ホームで自分を表現していた。
おそらく、劇団551に魂が揺さぶられたのだろう。
「僕、来週にある蓬莱の会社説明会に行くわ」。
「ほな、俺も付いていくわ」。

場所は、これまた記憶が曖昧なのだが、府立体育館(エディオンアリーナ大阪)の近くだったと思う。
蓬莱の本社?の2階?に上がり、案内された部屋(会議室?もう記憶が曖昧で)に入ると、スーツを着た学生が10人ほど。
もちろん、Iもいた。
「あぁ、krmくん」。
「おっす。昨日もバイトで顔合わせたけど」。

背が高く清潔に髪を整えた男性、ほっそりしてハキハキした女性。
人事の人だろう。
堅苦しくない雰囲気。
「この人ら、25、6やろかぁ」。
年齢が近いからか、お兄さん、お姉さんという風に感じる。

会社説明会が始まった。
「兄ちゃん、姉ちゃん、フレッシュな感じするよなぁ」と思っていると、御大が登場。
人事部長?肩書きは忘れたが、眼鏡を掛け、ニコニコしたお爺さん。
学生は配られた会社案内に目を通し、それを補足するように、お爺さんが明るい口調であれこれ言う。
「豚まんを作る職人のコンテストを、社内でやってるんです。まぁ、みんな美味しいわ。どう評価したらええねん?」とか、「社員みんなで好きな活動をしててね、草野球チーム作ったりとかね。私は劇団551。CMにも出てます」。
はっと思い、人事部長?の顔を見ると、「蓬莱のCMにお爺さんおったけど、この人か!?」。
「にこやかな顔立ちやし、口も達者そうやし、わかる気がするわぁ」。

会社案内とは別に配られた冊子に目を通すと、漫画だった。
俺のレベルに合わせてくれたのだろうか?
蓬莱の創業者は台湾人で、戦後の貧しい時代に難波でお店をオープンする。
「美味しいもん食べれたな」という幸せそうな表情でお店から出てくる家族。
外の電柱の影から、それを眺めていた創業者も笑顔に。
そんな内容だったと思う。
まぁ、俺は食糧難の時代を経験していないが、蓬莱で買い物した後、いつも笑顔を浮かべているかも知れない。
「早くて安くてうまいもん買えてよかったな」と。

「面接を受ける人は、健康診断書を用意して下さいねー」。
お姉さんが学生にそう告げ、会社説明会は終わった。
「参ったなぁ。健康診断書、いるんかよ(常識やけど)」。
その年、俺は学校の健康診断を受けていない。
「面倒くさぁ」と理由で。
「今から自腹で病院行って健康診断受けなあかんのかよ。面倒くさぁ」。
当時の俺は、本当に世の中をなめきっていた。

Iとは今も付き合いがあり、ちょくちょく酒を飲む関係だ。
30を過ぎたあたりから髪が薄くなり、もう、そこらの僧侶よりも僧侶らしい風貌になった。
結局、彼は蓬莱を受けず、今は給食会社に勤めている。
月に何度か出張で色んな土地をまわって営業活動。
「鹿児島の××はすごく美味しくてねぇ」。
「四国の××に美味しい海苔が売っててねぇ」。
そんな話を肴に、俺も一緒に酒を飲む。
たまにね。

卒業後の俺のことは、記事やプロフィールに書いた通りだ。
が、「もし、あの時、蓬莱の面接を受けて採用されていたら、今の俺はどんな俺やったやろ?」。
生地に具を包む俺。
蒸す俺。
そんな自分を想像しながらクランクを回していると…。

「うぉぉー!!」。
一瞬、死ぬかと思った出来事が。

つづく

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